インタビュー

絵本/児童書の“萌え絵”論争はなぜ白熱する? 「萌え絵」「マンガ絵」のボーダーを考える

2019/01/02 21:00

あのアンパンマンも最初は叩かれていた

 そもそも、萌え絵という以前に、マンガ絵が絵本/児童書に使われること自体が嫌だという人もいるだろう。ネット上では、マンガ絵の絵本/児童書について、「表情が豊かすぎて、子どもの想像力が育たない」「フラットな絵の方が合っている」とする声もある。ときまつ氏は、いまや誰もが認める子どもたちのアイドル・アンパンマンも、絵本として初めて世に出た1970年代、「あれは童話ではない、絵本ではないと、ボロクソに叩かれていた」という事例を教えてくれた。

「子どもたちは先入観なしに、アンパンマンというキャラクターを『かっこいい』『可愛い』と受け入れていましたが、当初は『マンガ絵だから』という理由により、絵本作家の間で批判されていたんです。当時、マンガは『読むと頭が悪くなる』『目が悪くなる』などといわれ、文化として認められていなかったんですよ。しかし、『アンパンマン』は、今でも愛され続ける作品・キャラクターになりました。今、一部の人たちが『萌え絵だ、萌えキャラだ』と批判されている作品・キャラクターも、子どもたちに認められていさえすれば、20年後、30年後も愛され続けるのではないかと思います。それに、日本のマンガは、いまや世界的に認められている。マンガ絵の絵本や児童書を批判するのは、私からすると、『考えが遅れている』と感じますね。偏見を持たず、ちゃんと読んでほしいです」

 ときまつ氏いわく、以前からポプラ社は、マンガ絵の子ども向けの小説を出版しているとのこと。最初は、「マンガの絵で挿絵?」と驚いた人もいたであろうが、「いまだに出版されているということは、すでに認知されているということでは。いつの時代も、先駆けは批判対象になりやすいものですが、出版社は一部の『萌え絵だ』『マンガ絵だ』という批判で、出版をやめることはしないでほしい」ときっぱり述べる。

 書店の絵本/児童書コーナーで、“モヤッ”としたときには、ときまつ氏の言葉を思い出し、自分が何に違和感を覚えているのか、そしてそれは違和感を覚えるべきものなのか、あらためて考えてもいいのかもしれない。

最終更新:2019/01/02 21:00
シンデレラ (せかいめいさくアニメえほん)
あのアンパンマンさんにも苦渋の過去があったなんて