対談「障害を持つ人が働くために」後編

「障害者について知らないからこそ、怖いと思っていた」社会が変わるために必要なこととは?

2018/06/15 15:00
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光枝茉莉子さん

 小1~高3までの障害のある子が通う学童保育のような放課後デイサービス「あいだっく」を運営する上田宏樹さんと、障害があるため企業での就労に不安を感じる人たちが雇用契約を結ばずに働ける就労継続支援B型事業所「アプローズ」代表の光枝茉莉子さん。両氏の対談から、障害を持っているがゆえに、放課後の過ごし方においても働き方においても選択肢が非常に限られてしまうという現実が見えてきた。

(前編はこちら:障害者の「選択肢」を増やす――放課後デイサービスと就労継続支援B型事業所がもたらすもの)

■就学と就職の間にある断絶は、本当に溝が深い

 後編は、「いまは、本人の意志と周りの支援があれば民間就職につながる道も確保されるようになりつつある」と話す光枝さんのお話からスタートする。

光枝茉莉子さん(以下、光枝) アプローズでは、障害者によるフラワーアレンジメントサービスを行っていて、主にネット販売用の商品を制作しています。ただ、障害者スタッフがずっと働き続けるための場所を提供しているわけではありません。ウチに来たのをきっかけに就職したいと考えるようになった方、働く自信を持てた方は積極的に動いてほしい。今年で5年目を迎えましたが、これまでに20名以上の方が企業に就職されました。


上田宏樹さん(以下、上田) 就職は、どういうところへ?

光枝 本当にいろいろです。事務職の方もいれば、経験を生かしてお花関連の会社に就職された方もいます。職場によって、お給料の額は大きく変わります。アプローズはB型事業所なので月に数万円にしかならないのですが、就職すれば少なくとも最低賃金以上は支払われます。就職の前後で彼らの能力に大きな変化があったわけではなくて、環境が変わってしっかり働きさえすればお給料がアップするということなんです。だから私たちは、ずっと事業所に囲い込むのではなく、社会に出る背中を後押しするスタイルを目指しています。

上田 僕たちも、就労支援を考えたことがあるんです。就学中はいろんなものに守られていますけど、卒業してからのほうが人生は長いですよね。高校卒業後の“行き場”を考えてあげたいし、それを望まれる親御さんの声もたくさん届いています。

光枝 就学と就職の間にある断絶は、本当に溝が深いですよね。

上田 残念ながら、僕らは就労支援にすぐには取り組めないんですよ。卒業する子どもたちの数は年々増えていくので、中途半端な状態で始めても、就労支援を待つ子どもの数がどんどん増えていくだけなので。でもいずれ、意外な形で彼らの“仕事”を作れればと思っています。自分で収入を得るってことももちろん大事なんですけど、それ以上に、卒業後の“居場所”が必要です。どこにも行けない子がいる。ずっと家にいるしかない。すると親御さんの人生にも影響してしまう……障害があるというだけで、こんなに選択肢のない人生を余儀なくされるってヘンですよね。そこに風穴をあけていきたいです。


障害者のリアル×東大生のリアル