ちょっと意外な展開

「ゲンコラ」で話題『はだしのゲン』、発売当初は返本の山もなぜか後押しされたワケ

2018/06/09 16:00

「共産党系」のマンガを、「自民党」がフジで紹介!?

 そんな作品が突然、売れ始めた。きっかけは、当時のフジテレビが午後3時から放送していたワイドショー『3時のあなた』に取り上げられたこと。放送が終わったとたんに、注文が殺到し営業部の電話は鳴りやまなかったという。

 なぜフジサンケイグループの一翼を担うフジテレビが、共産党系の出版社から刊行されている「左翼マンガ」を取り上げたのか。西河内さんは回想する。

「当時の自民党の、とある国会議員が、作品に感銘を受けてフジテレビに働きかけてくれたんです」

 現在では「左翼マンガ」という目で見られる向きも多い『はだしのゲン』。でも、当時、草の根の普及運動に熱心に取り組んだのは、反共・保守・右派に属する人も多かったという。出版元が共産党系なのに、思想的には真逆な人たちが『はだしのゲン』を支持したのである。

「ここまで『はだしのゲン』が普及したのは、作品のファンのおかげ。中沢さんが描いた原爆の悲惨さを、多くの人になんとか伝えたいと思った人たちが、思想の違いを気にせず頑張った成果です」


 まさに「ファンたちの熱い想い」によって、ロングセラーとなった『はだしのゲン』。「ゲンコラ」の問題は、永遠に愛される作品であることを知る奇貨となったのか。

(文=昼間たかし)

最終更新:2018/06/09 16:00
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