ドラマレビュー

『ブラックペアン』嵐・二宮和也に拍手喝采、イラつかせる“チンピラ演技”の魅力とは

2018/05/01 21:00

苛立ちと怒りを抱える男がハマるワケ

 渡海の姿を見ていると、ある作品を思い出す。堤がチーフ演出を務めた連続ドラマ『ハンドク!!!』(01、TBS系)だ。本作はTOKIO・長瀬智也が演じるヤンキー上がりの半人前ドクター・狭間一番が、医療は患者にとって平等ではないという残酷な現実に直面して、抵抗する姿を描いている。

 二宮が演じたのは坂口ノブという一番の弟分的存在。髪を金髪に染めたチンピラ的佇まいのノブは、チャラくて気さくな若者という感じだが、実は街の不良たちを束ねる恐ろしい存在だったことがわかってくる。病気の仲間を一番の病院に入院させたところ、仲間が命を落とし、その背後に臓器移植の問題が絡んでいたことを知ったノブは、病院の院長を刺したのちに命を落としてしまう。

 筆者は本作を見て、初めて二宮の存在を強く意識した。普段はヘラヘラしているが、腹の底に苛立ちと怒りを抱えていて、いざとなると爆発させる演技に圧倒された。

 同じ医療モノの『ブラックペアン』で、竹内が演じる研修医の兄貴分を二宮が演じていることに時の流れを感じる。しかし、全身からみなぎる苛立ちや怒りの芝居は『ハンドク!!!』の頃と変わらない。もしかしたら、それ以上かもしれない。

 第1話の平均視聴率は13.7(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、同枠の過去作と比べると若干低めだ。渡海の態度がひどすぎるという視聴者も少なくないのだろう。しかし、見ていて嫌な気持ちになるということは、それだけ芝居の本気度が高いのである。久々に発揮された二宮のチンピラ演技、極限まで追求してほしい。
(成馬零一)


最終更新:2018/05/02 11:23
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まだかまだかと待ったかいある芝居!