太田光、セクハラ問題めぐる「オンナを使うのは男社会へのカウンター」発言がズレているワケ
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「男社会に対するカウンター」爆笑問題・太田光
『JUNK爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ、4月24日)
セクシャルハラスメントとパワーハラスメント。どちらもあってはならないことであるはずなのに、扱われ方がこんなにも違うのは、どうしてだろう。
昨年、「週刊新潮」(新潮社)が、豊田真由子議員(当時)の政策秘書に対する「このハゲ~!」といった暴言や暴行を報じ、その証拠として音声データを公開したことによって、豊田議員のパワハラは誰もが認めるものとなった。豊田議員は離党し、謝罪会見を開く。のちに傷害と暴行の疑いで書類送検された。
一方、女性記者が、財務省事務次官・福田淳一氏からの「おっぱい触っていい?」といった明らかなセクハラ発言を録音し、同誌に持ち込んだ場合、簡単にセクハラとは認定されないようだ。『バイキング』(フジテレビ系)で、フリーアナウンサー・高橋真麻は、「女性が『やめてください』などの否定の言葉を、どんな口調で言ったかにもよる」といった旨の発言をし、女性の態度によってはセクハラに該当しないとしていた。
騒動を受けて事務次官は辞任したものの、セクハラは最後まで認めず。世間では、女性記者が会話を無断で録音をしたことを責める声も上がっている。「証拠なしに相手を糾弾しても、誰も相手にしてくれない」という理論で考えれば、録音は当然の行為だと思うが、なぜかセクハラになるとこの理論が通じなくなってしまうのだ。
パワハラの無許可録音や週刊誌への持ち込みは是とされるのに、セクハラでは非とされ、女性側の欠点が指摘される。これは女性蔑視を如実に現していると言わざるを得ないが、セクハラ問題になると争点の“すり替え”もよく行われる。
例えば、「オンナを利用して、仕事を取っている女もいるじゃないか」が、それである。
タレントのフィフィは、主婦と生活社が運営するウェブメディア「週刊女性PRIME」の連載「フィフィ姐さんの言いたい放題」で、「セクハラをするおじさんも気持ち悪いけど、こうした“女性を利用したやり方で取材をする”ということも、それと同様に気持ち悪いことだと思う」と述べている。
恐らく、“女性側もおじさんの下心を利用しているから、どっちもどっち”と言いたいのだろうが、フィフィはおじさんと女性記者の持つパワーバランスに気づいていない。例えば、女性記者が性的な誘いを持ちかけた場合、権力を持ったおじさんは断ることができるし、断ったことで自分の本業に差しさわりは生じない。それに対し、権力を持ったおじさんが女性記者に性的なことを持ちかけた場合、断ったらおじさんとの仕事にデメリットが生じるのはよく聞く話で、かつ自分の会社の上司にも喜ばれないだろうし、記者生命が終わる遠因ともなりうる。権力者のおじさんを怒らすと、全ては終わる可能性もあるのだ。仕事上の上下関係を利用して、イヤと言えなくさせるのがセクシャルハラスメントであるのに、フィフィは「オンナを使ってトクをしている女性がいる」と話をすり替えている。