[女性誌速攻レビュー]「non・no」5月号

ファッション、SNS、会話――「non・no」女子大生の新生活号がルールブック化している謎

2018/04/19 19:50

ファッション同様、会話でも正解を求めるノンノ女子たち

 続いて見ていくのは、引き続きの新生活応援企画「人見知りでも会話が続く魔法の話し方」です。「TALK&トーク話し方教室」を主宰する野口敏さんが、「進学や就職でいろんな年齢の人との交流が広がる18歳から23歳ぐらいのノンノ世代」は「人見知りして当たり前の時期」と優しく諭し、会話をつなげるテクニックをNGフレーズつきで教えてくれます。

 例えば、通学・通勤中は、一言目に「まだまだ寒いね~」と共感を得られるお天気ネタで、相手に話しかけるのがよいそう。二言目には「私、花粉症っぽくて~」など、天気に関係する「小さな自己開示」を、そして三言目には「晴れた日には普段何してるの?」「お花見とか行くの?」と「お天気話を引っ張りずぎず、相手を主役に話題転換」することがすすめられています。つまり季節行事など、相手も気楽に答えられる踏み込みすぎない質問をするのがいいというわけです。

 間違っても「彼氏とお花見行くの?」「ここ、第一志望だった?」などと突っ込んだ質問をしたり、「私、この大学でうまくやれるかなぁ」とネガティブ発言をして相手に返答を困らせてはいけないそう。

 確かに。至極まっとう。その通り。間違ったことは1つも書いてない。正しすぎてぐうの音も出ません。こうしたシーン別のHow toが全17パターン載っており、ここに書かれたマニュアル通りの会話ができれば、“感じのいい子”と思われること必至でしょう。しかし、何ていうか、ここまで丁寧に手取り足取りレクチャーする必要ある……? 

 ましてや、「non・no」の主な読者層は、保守的で優等生度の高い女子大生。そういう子たちほど「私って人見知りで会話がヘタだな」と悩んでいて、この企画も真面目に読んで実践しようと思うかもしれませんが、おそらくその悩みは杞憂で、きっと普段から周囲に気を配り、感じのいい会話ができている(しようと努力している)のではないかと想像します。ファッション同様、会話においても正解を求めてしまうノンノ女子たち。ここにおいても「他人から嫌われたくない」「周囲から浮かずにうまくやっていきたい」という気持ちの過剰さを感じずにはいられませんでした。


お互いを監視し合うSNS世代

 最後に見ていくのは「SNS『春のこじらせ見え』注意報」です。「好かれファッション」に「会話テクニック」と、どうしてここまで「周囲から浮かない」「他人に嫌われない」ことに尽力しているのかと思っていましたが、この企画で合点がいきました。そう、「non・no」世代は、物心ついた頃からSNSが存在する生活を送ってきているんですよね。

 なお「要注意ポスト」として挙げられているのは、「昔の盛れてる自撮り」「加工済みのすっぴん」「彼氏の存在をほのめかす」「タグの連発」で、そこには「投稿を見た友達に心の中でツッコまれているかも――!?」とキャッチが添えられています。

 こういった投稿をしないように気をつけるワケは、自分が他人の投稿をチェックするとき、同じようなポイントが目につくからなのではないでしょうか。SNS上で常日頃からお互いにお互いを監視し合っているわけですから、先に挙げたファッション企画でのジャッジが異様に細かく厳しかったのも、当然の流れなのかもしれません。そんなノンノ女子たちに「他人は、そんなにあなたのことなんて気にしていないよ」というありがちなアドバイスは響かないでしょうが、そんな若さゆえの“こじらせ”が、身に覚えもある筆者でした。
(橘まり子)

最終更新:2018/04/19 19:51
non・no(ノンノ) 2018年 05 月号 [雑誌]
SNSは女たちにたくさんのものを与え、そして奪っていったよね