コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

指原莉乃、AKBステージ落下事故への「不注意」発言に見る“男になった女権力者”の顔

2018/04/05 21:00

 さいたまスーパーアリーナで行われたAKBグループのコンサートで、メンバーが2日連続ケガをした。HKT48の秋吉優花が高さ2.7メートルのステージから落下して足の指を骨折、翌日はAKB48の稲垣香織が、やはり同所からステージ下に落下し後頭部を骨折した。ステージの下にマットなどは敷かれておらず、当然運営側が非難されている中、HKT48・指原莉乃は「本人たちは絶対に自分の不注意だってわかってるから。。なんでも運営運営っていうのは違うんですよねえ。。」とツイートした(現在は削除)。

 秋吉、稲垣も運営を責めるような発言はしていないが、当たり前だ。事実上AKBグループのトップといえる指原が、自己責任と言っている以上、そこに逆らったら心象が悪くなるのだから。ちなみに、脳神経外科の医師に話を聞いたところ、一歩間違えば急性硬膜外血種を起こし、命に係わる事故になっていた可能性があるという。

 指原は「イヤモニでずっと『落ちないでね!気をつけてね!』と声がけはしてくれてます」と説明し、運営側は責任を果たしていると思っているようだが、万が一落ちた時に、ケガをしないよう策を取ることが安全対策である。これだけ長い間ステージに立っていれば、指原もひやっとした経験があるだろうし、それを運営側に伝えて策を取るのは、キャリアがあってAKBの顔ともいえる指原の仕事ではないだろうか。けれど、実際の指原は、後輩の安全より、運営側に“恩”を売ることを選んだようだ。

 女性が権力を持つと、“女帝”と呼ばれたりする。AKBの選抜総選挙で前人未踏の三連覇を達成し、バラエティで活躍する指原は、風格としては完全に“女帝”だろう。けれど、不思議なことに、権力を持つと、“女”ではなく“男”になってしまう女性がいる。メンバーの命に係わるかもしれない大惨事を“不注意”で切り捨ててしまう指原は、私にとっては典型的な「男になってしまった女」だ。

 前に出たい少女の“やる気”を理由に、少女の痛みや苦しみを無視して、自分の地位を安泰にする。指原自身もそういう生存競争をくぐりぬけて今があるのかもしれないが、「男になってしまった女」の下では、セクハラもパワハラもより悪質化するような気がするのは、気のせいだろうか。20代半ばで老成もしくは老害と化す指原は、芸能人としては完璧だが、やっぱりちょっとヤな感じである。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2018/04/05 21:00
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