コラム
【連載】オンナ万引きGメン日誌

オンナ万引きGメン日誌:中年男性が盗った――! 恐怖と興奮に震えた“初現場の思い出”

2018/04/14 16:00

 こんなに早く見つけられるものなのか。突然のことにドキドキしながら、テレビで見るのと同じような形で、棚の陰から中年男性の動向を見守ります。気が付けば先輩の姿はなく、どこか違うところから監視しているようでした。恐怖と興奮が入り混じったような感覚に襲われた私は、自然と高まる鼓動を感じながら中年男性の動向を監視するものの、棚から取る商品の確認はできても商品を隠す瞬間を見ることができません。結局、どこに何を隠したか、何ひとつ見ることができないまま、出口に向かって歩き始めた中年男性の背中を追いかけていると、どこからともなく現れた先輩が言いました。

「見れた?」
「すみません。ちょっとわからなかったです」
「じゃあ、声かけやってみな。お肉とか、お金払ってないものあるでしょ? って」
「え……、あたしがですか?」
「そばにいるから大丈夫だよ。ほら、もう出ちゃうから、行け!」

 ちょっとエッチに聞こえる先輩の台詞がツボに入り、反応しようと思いましたが、そんな状況ではありません。あまりの恐怖に躊躇しつつも、小刻みにアゴを動かしてゴーサインを出す先輩に背中を押される形で、店の外に出た中年男性を呼び止めます。

「あの、お客様? 店内保安です。何か、お忘れではないでしょうか?」
「あ? 何がだよ?」

 中年男性は鋭い目で私を睨むと、しわがれた野太い声で威嚇してきました。

「お肉とか、お金払ってないものありますよね?」
「え? あ、ああ、これか。ごめん、ごめん、忘れてた。いま払ってくるね……」

 先輩に言われた台詞を口にした途端、一変して恥ずかしそうな表情を見せた中年男性は、その場から逃れるように慌てた様子で店内に戻ろうとしました。呆気に取られて何もできないでいると、そっと先輩が出てきて中年男性の腰元をつかみ、反論を許さない口調で追い込みます。

「隠して外に出たらダメだからさ、事務所まで一緒に来てくれる?」
「違う! お金払うから勘弁してよ……」

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