大妻女子大学准教授・田中東子先生インタビュー【後編】

「壇蜜の宮城PR動画」「サントリー頂」他、“性差別”CMの問題は「演出ではなく構造」? 

2018/01/03 17:00

性差別炎上に感じる“溝”

――「女性差別」と声を上げる女性と、「男性差別」と声を上げる男性の間にも、溝を感じてしまいます。

田中 ネット上には、「男性も差別されているのに、フェミニストたちは自分たちのことばかり主張しやがって」といった論調の人がいますが、あれはあまりよろしくないですよね。差別されている女性と差別されている男性で手を取り合い「どこが嫌なの?」と、それぞれ理解を深め、対話の場が生まれればいいのに……と感じますね。

――女性差別だけでなく、男性差別CMの炎上が起こるようになったことで、「こうも炎上ばかりでは、表現の自由が侵害される」「なんでも取り締まるのはどうなのか?」といった指摘をする人も目につくようになりました。

田中 2017年9月、タレントの壇蜜さんが出演する「仙台・宮城観光キャンペーン推進協議会」制作の観光PR動画(浦島太郎をモチーフにしたストーリー仕立てで、壇蜜が、宮城のゆるキャラ「むすび丸」を「涼・宮城」に連れて行きもてなすという内容。壇蜜の唇のアップとともに「ぷっくり膨らんだ、ず・ん・だ」など性的と取れる台詞が随所に散りばめられたほか、亀の頭をなでると大きくなるといった演出も)が炎上しました。

 あの動画に対して、「壇蜜の唇のアップや、亀の頭が大きくなる演出をやめればいいのか」と言い出す人がいたのですが、そもそも「女性が男性をもてなすという構図」からして問題なんです。個別の表現を規制して解決する問題ではなく、CMの構造自体が差別的ではないか……ともっと深く考えるべきだと思います。


――この観光動画に関して、「別に全然気にならない」という女性もいましたよね。

田中 確かにいますよね。日本の広告業界はこれまで、女性を性的アイコンとして扱うCMを数多く作ってきただけに、それに慣れてしまったのかもしれません。学生の中には、「普段テレビや街中で見たときは何も思わなかったけど、あらためて授業で見て、おかしいと気づいた」という人もいましたよ。

るるぶ仙台 松島 宮城’18 (るるぶ情報版(国内))