非日常感を味わえる? 「CLASSY.」が30代女性にススメる“叱られ”の意味
続きまして、今号の問題企画「30代女子はもっと叱られたい!」を拝見いたします。キャッチには「たまにビシッと言われるといろんなことがうまくいく」とあります。
「あなたは、上司・先輩に叱られることがありますか?」という統計によりますと、2012年の調査より15年の方が「叱られたことがある」ポイントは減少しており、「企業でも“叱らない文化”は確実に広まっています」とのこと。「私たちはこんな時に叱られたいんです!」では「褒められるだけじゃ仕事のやる気が出ないタイプなんです」「理想の男性像を求めてイライラしたり失望したりを繰り返す毎日」「女子力が足りないと自覚しているもののついラクさを選んでしまう」など、30代女性たちが「叱られたい」現実を語っています。
またしてもこの手の啓蒙企画のお約束・謎の専門家(今回はコミュニケーション研究家なる人物)が登場し、「叱られることのメリット」を語っています。「人間は自分のことを認識する際、他者からの評価が大きな要素となるため、無意識のうちに自身に対する遠慮のない意見も欲しています。例えば何か悪いことをしても、それは修正できるものだという意識が潜在的にあるので、叱られることで自分が成長できると前向きに受け止められる人も多いんです」。叱られることへのメリットとは「自己実現へのきっかけになる」「癒し効果がある」「非日常感を味わえる」の3つにあるそうです。
なんでしょう。ここまで読んでいて、非常にイライラするような、この気持ちは。『東京タラレバ娘』(講談社)を「刺さるわ~~」と共感しながら読んでいる人は納得するのでしょうか。大人になっても叱られたいなんて、だって叱られたくないから早く大人になりたいんじゃなかったの……。一歩間違えればパワハラ地獄にも陥りかねない「叱られる」こと。それを専門家という卑怯な手を使って肯定しようとするとか、ちょっと危なくないですかね。
そんな気持ちをよそに、この企画では「ダイエットアプリ」「寺カフェ」「おっさんレンタル」「辛口占い」「ゲイバー」などで「“叱られたい症候群”の30代読者があらゆる方法で叱られてみました」と、わざわざ叱られるに行くのです。「なかなかときめく男性に出会えないんです」「多分めっちゃ選んでるのよ、あなたの分際で」「キャー(笑)」……etc。あぁあほらし。イライラしてたのあほらし。結局は叱られることもエンターテインメントなのでした。ドキドキ感を味わうためにジェットコースターに乗るのと同じ。しっかりベルトを締めているという安心感があるから、ぶんぶん振り回されても大丈夫。機械も住職も占い師もゲイバー店主も、自分の欲望を満たす、刺激するための道具にすぎない、そういう安心感の上に成り立つエンターテインメントなのでした。
でも、叱られるというエンターテインメントの枠を超えたときに、本当の恐怖がやって来るのもまた事実。口のうまい既婚男、依存してくるDV男、マルチに宗教……「キャー叱られちゃった(笑)」では済まされない状況が。やっぱなるべくなら「叱られない」人生を送りたいものですね……。
(西澤千央)