[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」6月13日号

「婦人公論」の「体の不調」特集で暴れる、冨士眞奈美・吉行和子・仲代達矢ら“あっけらかん”としたアラ80

2017/06/02 19:30

fujinkouoron170613

 今号の「婦人公論」(中央公論新社)の特集は「不調のサインを見逃さない」。キャッチフレーズには「40代から70代の『体の節目』」とあります。「40代に入ると徹夜はできないし、深酒できないし、どんなに疲れていても熟睡できない……」と、この手の話題なら3時間はぶっ通しで話せるようになる、それが中高年たるものの矜持。冒頭のアンケート「私の体の“曲がり角”は?」にも、「私の不調」が生き生きとページに踊っています。そんな中、最も心を掴まれたのが「不調のどん底で考えていたこと」にあった、「年齢的なものだから仕方ない。それに、あんなにキレイな歌手だって尿もれパッドとかきっと使っているはず。そう思えば明るい気持ちになれる」(53歳主婦)という一文。どん底の人間を救う尿もれパッド……これはサラサーティのCMを務めたRIKACOの偉業を讃えるべきでは……。

<トピックス>

◎特集 不調のサインを見逃さない

◎冨士眞奈美×吉行和子 人生後半から大切なのは食事、運動、そしてときめきよね


◎仲代達矢 演じ続ける。悪しきものへ抵抗するために

■「和子っぺ」という愛称のほのぼの昭和感

 こちらの特集、40代以降の女性の体の変化と病気の関係を医学的見地から語るものや、がんと宣告された人のルポ、脳梗塞から生還した磯野貴理子のインタビューなど、ほとんどが「病気」や「体調」を真正面から捉えたものですが、座談会「人生後半から大切なのは食事、運動、そしてときめきよね」だけ毛色が違います。女優の冨士眞奈美、吉行和子、エッセイストの関容子による「仲よし3人、気ままにおしゃべり」と銘打たれておりますが、これを「気まま」という言葉で片づけていいのか……。

 冨士と吉行といえば、芸能界でも有名な仲よしコンビ。関とも40年来の付き合いなのだそう。一応「元気に過ごすために、日々心がけていることは?」というテーマはあるものの、話が進むにつれて完全に脱線。台本の台詞を覚えるのが大変という話で、てっきり「こういう努力をしている」といった女優魂エピソードが出てくるのかと思いきや、「私なんか、受験生向けの記憶促進器具というのがある、と聞いて、慌てて買いに行ったの」(吉行)、「えーっ。そんなのあるの?」(冨士)、「そしたら、結局ウォークマンみたいなものなのよ。自分でしゃべったのを耳から聴いて覚えなさい、ってなわけなの」(吉行)、「なぁーんだ。つまんないの」(冨士)。

 料理をまったくしないことでおなじみの吉行を、「この人、キッチンを何百万もかけて改装して、汚すのがいやだから使わないの」と冨士がイジれば、吉行が「何百万じゃないわよ、何十万よ。面白く言わないでよ」と軽くキレる。その後も冨士の盛りグセはとどまるところを知らず、


「和子っぺが私の家に一度だけ来たことあるのね、そのときにこめかみから血を流してるから、私びっくりして、『どうしたの?』って聞いたら、鍼を200本くらい打ったらしいの」(冨士)

「それは、嘘だと思うけどね」(吉行)

「本当よ。頭のてっぺんとか、瞼の上とか、こめかみとか、もう鍼だらけになって(中略)両側のこめかみから血をタラーっとたらして、家に来たの」(冨士)

「その話は私、信じないな」(吉行)

 この鍼で流血の話は水掛け論が続き、最終的には「今日子ちゃん(故岸田今日子)が、もういないけど、いたら覚えてるわよ、その話。おかげで元気なの、この人」(冨士)と死者まで引っ張り出してくる始末。このやりとりで意外だったのは「和子っぺが私の家に一度だけ来た」というところ。40年来の付き合いで何でも話す仲なのに、その距離感はお互い守り合っているんだなぁと。これこそが長く友情関係を続ける秘訣なのかも。そしてこういう会話ができる相手がいるからこそ「元気で長く生きよう」と思えるのでしょうね。

婦人公論 2017年 6/13 号 [雑誌]