仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

オリラジ・中田敦彦、“天狗”といわれるコメンテーターぶりに見る「受験生メンタリティ」

2016/07/14 21:00

 『しくじり先生』も同様である。「天狗になってしくじってしまった先生」として出演した際、「武勇伝」でブレーク後天狗になり、凋落した後の暗黒時代をいかにして乗り切ったかを語っていた。「自覚のある天狗はいない」と中田は語るが、その一方で、自分がいかに天狗だったかは覚えているようで、ここでも、中田の中の“ダメな人”が生きていた。中田は、自分のしくじりの最大の原因を、慢心という“ダメな部分”であることを悟り、反省しているのだ。

 売れるという確固たる目標があり、それを邪魔する慢心や嫉妬と闘いながら努力するこの図式は、受験によく似ている。受験で不合格の場合、悪いのは100%自分(入試の問題が悪いという言い訳は通用しない)。つまり、中田は永遠の高3(受験生)なのである。

 『ナカイの窓』(日本テレビ系)で、中田の妻・福田萌が語ったところによると、中田自身の申し出により、小遣いは3万円、クレジットカードの明細は全て福田が管理、携帯にはGPSがつけられているそうだ。また、夫妻の寝室は別で、中田の部屋はホテルの部屋のように何もなく、今風にいえばミニマリストなのかもしれないが、私にはこれも受験生の部屋のように思えてしまう。かつて「合格のために、受験生は楽しいことは全て我慢すべき」とされる時代があったが、中田はそのルールをずっと守っているのではないだろうか。

 「臥薪嘗胆」という言葉がある。将来の成功のために苦労に耐えるという意味で、悔しさを忘れないために、あえて寝にくい薪の上に寝て、苦い肝をなめる苦労を自分に課したことから生まれた故事成語だが、中田は現代において、それを実行しているように見える。

 成功するためには、ダメな自分に打ち勝つ必要がある。成功をしなければ天狗にもなれず、失敗を面白く語るためにも、天狗エピソードは不可欠である。つまり、中田の芸人人生は“ダメな人”と“天狗”の反復なのだ。ネット民の批判に負けず、どんどん天狗になって、新たな芸風を切り拓いていってほしいものである。


仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。最新刊は『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/07/14 21:00
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女を見るときも偏差値つけちゃうんだろうか