サイゾーウーマンカルチャーインタビュー大正昭和のモガから学ぶ“はみ出す強さ” カルチャー 『モダンガールのスヽメ』淺井カヨ氏インタビュー 大正昭和の「不良で享楽的な最先端の女たち」――モダンガールから学ぶべき“はみ出す強さ” 2016/04/24 16:00 女子カルチャーインタビュー ――モガを含め当時の女性たちの感覚や考え方で驚いた点はありますか。 淺井 当時の婦人雑誌にある「悩み相談コーナー」には、実は現代女性の悩みとそう変わらないことが書かれているんですよ。例えば「コルクで作る眉墨で眉を描いていたら毛が抜けて困っている」「東京でタイピストになるならばどの会社が良いか」とか、ほかにも家庭の悩み、体の悩み、美容の悩み、育児の悩みなどが載っています。ネットがないから婦人雑誌に悩みを相談していたようですが、女性の悩みは普遍的なんですね。また「指輪の正しいはめ方を教えてください」の質問では、指輪の数や外し時を聞いているのですが、回答には「指輪はあまり沢山つけるべきではない」とある。モガは、逆にいくつか指輪を付けていた人もいました。そうやって、型通りのファッションからはみ出そうとしていたのがモガだったのです。 ■“選ぶことができる”という豊かさ ――「こうあるべきだ」というものに疑問を呈していたのがモガだったと。淺井さんに対しては、「不便なのになぜそんな暮らしをするんだ」という意見もあるかと思います。 淺井 私は別に昔に戻りたいと思っているわけではないんです。当時の暮らしを取り入れることで、「生きる」というのを考えたいと思っています。人類が発展していくためには技術の進歩は絶対に重要です。でも進化していく中で昔の物を顧みることの大切さは、選択肢を広げる上で大切だと思います。携帯電話もいいけど、黒電話で楽しむ人がいてもいいし、火鉢を使う人がいればエアコンを使う人がいてもいい。そうやって、一つひとつ自分に合うものが選択できる世の中であれば、楽しいと思うんです。 ――選択肢が広がることで、私たちの暮らしも豊かになるということですね。そんなモガを通して淺井さん自身が変わったことはなんでしょうか。 淺井 まず体調がかなりよくなりました(笑)。喘息、鼻炎、アトピー持ちだったんですが、当時の献立を基にした食事をする生活にしたら全てがなくなりましたね。また、昔はすごく人の目を気にしていたんですが、今は他人から嫌われようとどうでもよくなりましたし、やりたいことをやっているのでストレスもなくなった。その点は、モガの強さに影響されている部分はあると思います。 当時モガと呼ばれていた女性たちにお会いしてお話すると、皆さん、自分というものを強く持っていて、何が好きで何がしたいというのがはっきりしているんです。他人に対しては物腰柔らかくて全然いばらないのに、自分のことに対しては芯が強い。今、1つのトレンドにしてもいろいろな物が入っては消えていき、あまりにも好みが細分化しすぎている時代です。その中ではっきりと自分のやりたいことや好きな物を見つける上では、モガから学べることはありますよね。本のタイトルに『モダンガールのスヽメ』とつけましたが、モガというスタイルに限らず、他人の目を気にせずに、自分が本当にやりたいことを見つける後押しになればいいなと思っています。 (石狩ジュンコ) 淺井カヨ(あさゐ・かよ) 名古屋市生まれ。東邦高等学校普通科美術・デザインコース(現・美術科)一期生、愛知県立芸術大学美術学部デザイン・工芸科デザイン専攻卒業後、「日本モダンガール協會」を設立。共著に『東京府のマボロシ』(社会評論社)がある。 ・日本モダンガール協會公式サイト 前のページ123 最終更新:2016/04/24 16:00 Amazon 『モダンガールのスヽメ』 あたちも現代版モガを目指していきたいところ 関連記事 「ジューシィメイク」「ロースキンメイク」トレンドの“顔”が映し出す、女の願望と社会プリクラ誕生20周年! 女子高生の「なりたい自分になる」は、どう実現されてきたのか?「服なんてそんなにいらない」若者たち、原宿ストリートファッションは本当に衰退したのか?「あした、なに着て生きていく?」キャッチコピーが示す、女子の“気分”とファッションの“空気”ガングロギャル×女子大生が語る、「モテ」と「偏見」と「将来」――“同世代女子”座談会 次の記事 女性の活躍に本当に必要なこととは? >