『不倫経済学』門倉貴史氏インタビュー

不倫で得られる快楽=5,339万円!! 『不倫経済学』門倉貴史氏に聞く、“既婚者”の恋愛市場

2016/03/20 16:00
hurinkeizaigaku-book.jpg
『不倫経済学』(ベストセラーズ)

 上戸彩と吉瀬美智子が、平日の昼間に夫以外の男性と不倫する妻を演じたドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)から早2年が経過しようとしている。放送中には、『昼顔』の公式サイトに、自らの不倫体験投稿や不倫を容認する意見が殺到したことも記憶に新しい。不倫は今やセンセーショナルな社会現象ではなく、“みんながやっている”日常と化しつつあるようだ。

 そんな中、エコノミストの視点で不倫をあらゆる方向から数値化した『不倫経済学』(ベストセラーズ)が刊行された。著者は『ホンマでっか!?TV』(同)に出演中の経済評論家・門倉貴史氏で、本書では、熟年離婚の痛みや、中高年層の不倫による快楽の価値をお金に換算したり、中高年向け性風俗トレンドや高齢者の恋愛と性に関する消費市場にまで斬り込こんでいる。

 これまで、恋愛市場についてはさまざまな分析がなされてきたが、不倫市場についてはほとんど皆無。それというのも、経済学においても「既婚者の婚外恋愛がそもそもタブー視され、分析の対象にならなかったから」だと同氏は語る。では、タブーを破って分析した先に何がわかったのだろうか? 門倉氏に聞いた。

■不倫で得られる快楽=5,339万円は得か損か?

――不倫はメジャーなものになりつつありますが、経済の切り口で論じられているのはあまり見たことがありません。このテーマを取り上げた理由を教えてください。


門倉貴史氏(以下、門倉) これまで独身者の恋愛については、数学者フォン・ノイマンが1944年に完成させた「ゲームの理論」を駆使して、男女をいかにマッチングさせるかの分析をエコノミストや経済学者がたくさんしてきました。しかし、平均初婚年齢と平均寿命を考えると結婚後の人生の方がはるかに長く、さらに世界の成人人口のうち8~9割が既婚者である事実などから、既婚者の恋愛分析が重要なのは明らかです。

 また離婚裁判の慰謝料請求など、裁判で算定される賠償金額においても、個人の「快楽」や「苦痛」、「喜び」や「悲しみ」を金額に換算することへの社会的ニーズも高まっています。そうした事由からも、「不倫」つまり既婚者の恋愛を数字やデータで素描する必要性はあると感じています。

――本書では、さまざまなアンケート結果やデータをもとに、専業主婦が不倫をするメリットを換算しています。そこからわかったのは、不倫のメリットが年間19万732円を超えていれば夫を裏切って不倫をする、ということでした。

門倉 この金額は、イギリスの既婚者向け出会い系サイトの不倫経験者・男女各3,000人にとったアンケートを参照して算出したので、日本だと19万円より高くなるはずです。金額を算出する際、不倫の“露見率”が重要になってきますが、イギリスでは「配偶者にバレなかった」と答えた女性が95%だったので、逆算して露見する確率は5%です。しかし個人的には、日本の場合だと地域や社会の目があるので、もっと露見確率は高いと思います。露見確率が高ければ、期待費用(デメリット)も大きくなるので、年間いくら以上のメリットがあれば不倫をするかとなると、日本の専業主婦の場合は高くなるのです。

――バレるリスクやその不安感を考えると、期待費用は何百万、何千万までいくと思いました。


門倉 もちろん、不倫がバレない自信があるならいくらでもその期待費用は低くなるし、バレる可能性が高かったりバレたら困るのであればもっと高くなります。ただ本にも書いていますが、不倫で得られる快楽を不倫経験者のアンケートで金額換算した日本の調査結果によると、女性は平均で5,339万円、男性は1,182万円でした。不倫の恋愛による快楽は、禁断という蜜がかかっているからか、これほど大きい。個人の差もありますが、「バレるかも……」「バレたら……」というリスクや不安感と得られる快楽を比較して見る限りでは、不倫はかなりコスパが良いということになります。

『不倫経済学 (ベスト新書)』