『不倫経済学』門倉貴史氏インタビュー

不倫で得られる快楽=5,339万円!! 『不倫経済学』門倉貴史氏に聞く、“既婚者”の恋愛市場

2016/03/20 16:00

■男は妻を愛しているから不倫する?

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門倉貴史氏

――本書に登場する不倫経験者3名は、罪悪感がほとんどないと語っています。世界的な既婚者向け出会い系サイト「アシュレイ・マディソン」が利用者に行った調査でも、不倫に罪悪感のある女性の世界平均が8%であるのに対して日本人女性はたったの2%だったとか。この点についてはどうお考えでしょうか?

門倉 私が事前に想定していた数字とは、かなり乖離がありました。大人数を対象にしたアンケートでも、不倫に対する罪悪感がやっぱり日本人はとても低いです。不倫経験も2割以上は「あり」と答えます。時代とともに価値観が変わるでしょうし、日本人はそもそも宗教心の薄さによって罪の意識を感じにくいという点もあると思いますが、この「罪悪感のなさ」は、つまり不倫が発覚しても、それが原因で離婚には至らないだろうと考える人が多いということです。もちろん離婚はしたくはないものの、不倫をそこまで一大事だとは捉えていないのだと思います。

――その「不倫ごときでは離婚に至らないだろう」という感覚は、女性の方が強いのでしょうか?

門倉 いえ、これは特に男性に顕著です。そもそも不倫をする既婚男性は、妻を愛しているのに不倫に走る、むしろ妻をもっと愛したいから不倫に走るということが、調査の結果でわかっています。それは妻と不倫相手、どちらも同じ恋愛対象として手に入れたいというわけではありません。不倫相手と非日常的な時間を共有して、ときめきやドキドキを得ることで精神的な余裕ができ、長い結婚生活で薄れてしまった妻への愛、存在を再評価しているのです。不倫相手には体のつながりではなく心のつながりを求め、結果として今まで以上に妻を大事にする。だから、「妻を大事にしているのだから不倫がバレたとしても離婚などないだろう」という、なんとも都合が良く楽観的な思考に向かうようです。


――男性の不倫はセックスのためではないのですね。一方、妻が不倫をする要因として、セックスレスからの寂しさを埋めたいからだとよく言われ、本書でも女性はそのように分析していますが、ほかにはどんな理由があると思いますか?

門倉 テレビの影響やSNSの発達ももちろんですが、周りに不倫している人がたくさんいるという情報が大きいと思います。「皆がやっているから自分もやって良いんだ」という集団心理が強く働いているのではないかと。昨今ではベッキーさん、宮崎謙介元議員、桂文枝師匠など著名人の不倫報道が絶えませんが、現在進行形で不倫をしている人はすごく安心したと思います。芸能界は週刊誌で晒されたり仕事を失ったりしますけど、一般の人はそういうのはないですから。こういう報道が出れば出るほど、不倫に対する抵抗感や罪悪感はどんどんなくなっていく傾向に作用するのではないでしょうか。

――みんなやっているという安心感で不倫もOKになる。これも国民性のようなものでしょうか?

門倉 目先の欲望は我慢して、将来に投資することで「安心」や「幸福感」を得ようとする日本人の気質が現れている気がします。旦那さんは目先の快楽を我慢して長時間労働をするので、夫婦間ではセックスレスになり、セックスレスだから妻も夫も外で不倫を、という循環が生まれやすいのでしょう。国民が感じる幸福度に関して、世界的なデータを見ても、セックスの平均回数と幸福度指数は比例関係にあり、例えばセックスの平均回数が世界一であるギリシャは、経済危機に陥っているにもかかわらず国民が感じている人生の幸福度は高いんです。もともと持っているラテン気質や、危機的な経済状況から刹那的な快楽へ逃げているという分析もできますが、一方、日本はセックスの平均回数も少なく、幸福度も低い。

『不倫経済学 (ベスト新書)』