[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2月23日号

ただただ壮絶な手記が並ぶ「婦人公論」に見る、女の生への貪欲さと図太さ

2016/02/19 17:00

 さて、ベッキーから北朝鮮までさまざまなキーワードが躍る中、おそらく対談収録時には現在自分が置かれる状況など思いもしなかったであろう人がここに。宮崎謙介“元”議員と、作家の吉永みち子の対談「『男の育児休業』、なぜ議員は取ってはいけないのか」。日本初となる議員としての育休取得を宣言し、一躍時の人となった宮崎元議員。なかなか広がらない男性育児休暇取得のアジテーターとなるはずが、LINE1日400回の「会いたくてたまらない病」患者に……。週刊誌に不倫をスッパ抜かれて、議員辞職に追い込まれた宮崎元議員の在りし日の対談記事となってしまいました。「たとえ政治生命を絶たれようと、僕が貫くべきものは」というキャッチフレーズさえ、下ネタに見えてしまう悲しさ。貫いて絶たれとるやないかい!

 妻の切迫流産から「共働き世帯は、男性も積極的に育児参加をしないと子育てはできないと思い」、育児休業の取得を思い立ったという宮崎氏。しかし党内外からも激しい突き上げに合い、「もっとスキャンダラスなことをした人はいっぱいいるのに、自分はそんなに悪いことをしたのだろうか」とやっぱり面白い感じに。たとえ政治的パフォーマンスであったとしても、「『男性社員は休まず働くべし』というパタニティ(父性)・ハラスメント」に一石を投じることは一億総活躍社会を推進する議員として決して無駄なことではなかったと思いますが、結局妻の妊娠・出産時に浮気する「男ってダメな生き物だからさ~」のステレオタイプに落ちてしまった宮崎氏。そんな氏をおそらく唯一歓迎してるのが、「仕事さえしていれば多少の浮気は……」と言いたい人たち。そもそも1日LINEを400回もやってたら、仕事してないわけですが……。

■ぐにゃぐにゃと曲げられないから男は短命

 続いては、創刊100周年記念企画の第三弾「名作&力作ノンフィクション特集 過酷な運命、それでも生き抜く」です。失業中の宮崎元議員にもぜひ読んでいただきたい珠玉のノンフィクション。あなたの妻も浮気相手も、あなたが思っている数万倍深い業と生命力で日々をサバイブしてますよ!

 戦争礼賛の空気の中で感じた無力感とそれでも生き残らねばという「藤原てい ばんざいで送られ、戦地に散った友。平和への願いは生き残った私に託された」、両親からの体罰、性暴力から万引きがやめられなくなった女の告解「刑務所から届いた懺悔の手記―『出産前日でも万引きがやめられない』」、家族・友人による「いじめ」から逃れるために作り出した“分身”に復讐される「いじめと暴力が生み出した『あいつ』に、母との絆、恋や仕事も奪われ」など、ただただ壮絶。


 これら三篇の「生きるか死ぬか」というラインとは少し外れますが、「桐島洋子 人は私を“未婚の母”と呼んだ。心細い失業者となっても、野望は失わず」も、宮崎氏が「女」を知るために最適なエッセイではないでしょうか。「私の友達の多くを、詰まらないただの母親に転落させ、愉しいオトナの仲間から遠ざけてしまう、けしからぬ小さな闖入者たちに、私はむしろ敵意さえ抱いていた」という桐島が、未婚のまま3人の子どもを妊娠、出産。8カ月まで妊娠を悟られることなく、2カ月だけ病気として会社を休み出産した1人目。2人目のときは「旅行と出産を一つの休みで済ませれば一挙両得」と海外出産を考えるも、このとき会社から突き付けられたのは「退職」。それでも旅行し、フランスから帰ってくる船の中で無事出産。3人目を出産してからは長女だけを連れてアメリカへ。しゃにむに食いつなぎながら、翌年には2人の子どもも日本から呼び寄せ、母と3人の子どものアメリカ生活が始まる……といった具合。

婦人公論 2016年 2/23 号 [雑誌]