サイゾーウーマンカルチャーインタビューキャッチコピーが示すファッションの空気 カルチャー 伊藤忠ファッションシステム・中村ゆい氏インタビュー 「あした、なに着て生きていく?」キャッチコピーが示す、女子の“気分”とファッションの“空気” 2015/05/17 19:00 女子カルチャーインタビュー ――その違いは、やはり世代によるものなのでしょうか? 中村 そうですね。ルミネのキャッチコピーは、どちらかというと、プリ下世代、特にプリクラ・上世代(以下、プリ上世代)の価値観に近いように思います。この世代は、幼少期は右肩上がりの空気の中で育ち、その後社会に出る際に就職氷河期で苦労した世代です。また、彼らが思春期を過ごした時代は、景気が低迷する一方で、“ギャル”が生まれたように、従来の価値の枠組みから逃れること、自由であることを良しとするような、ある意味、享楽的な世相であったように思います。だから、大人の決めたルールは当てにならない、自分しか頼りにならない、自分でどうするか考えたい、という気持ちが強い。主義主張もはっきりとしたいし、「ルールに縛られずに、自分らしく自由でいたい」という思いが、ほかの若者世代より強いんですよね。 自分が頼りという思いは、自己愛にもつながります。ルミネの「生まれ変わるなら、またわたしでいい。」(14年春)というキャッチコピーからは、自分が好きで肯定的だなという印象を受けます。 ――アースのキャッチコピーが刺さるのは、どのあたりの世代でしょうか? 中村 アースのコピーは、どちらかというとハナコジュニア世代、LINE世代の価値観に近いと思います。彼女たちは、バブル期の経験もなく、生まれたときから、世の中は不安にさらされていて、先行きも不透明な中で生きてきました。悪くなること、急速な変化が当たり前の環境の中で育ったがゆえに、個性を殊更に主張するよりも、周囲や状況に合わせて最適化を図る方が、ストレスなく生きられて安心だと捉える世代だと思うんですね。なので、悩ましい状況を“受け止める”となるわけです。 ――そういった時代背景は、世代による行動の違いにも影響を与えているのでしょうか? 中村 伊藤忠ファッションシステムでは、調査のために座談会などを行っているのですが、プリ上世代、プリ下世代の人たちは、とにかく意見が活発に出てくるんです。でも、ハナコジュニア世代やその下のLINE世代の人の座談会は、1人リーダー的な人がいると、その人に合わせる意見に傾いていったり、「まったく同じです」と答える場面も多い。こうした傾向はLINE世代の方が顕著ですね。ネットが当たり前という情報の時代においては、なにもかもが自由である一方、逆に「意見を言う」「自分を持つ」こと自体がストレスにもなりかねない時代なんです。 ――そういう傾向は、ファッションにも関係するのでしょうか? 中村 そうですね。特に現在10代後半~20代前半のLINE世代は、SNSの影響もあり、人間関係が常に可視化されてしまっているので、どんな人間関係にも印象良くなじむ、最大公約数的なファッションを選ぶことは多いと思います。おしゃれも最近はどんどんシンプルになってきていて、この世代には「盛る」とか「デコる」とかという感覚が以前ほどなくなっているんですよ。「○○すぎない」というのも、この世代のキーワードだと思います。 ――反対に「盛る」とか「デコる」というのは、プリ下世代やプリ上世代の特徴ですよね。だとしたら、昨今のノームコアブームとかは、この世代からしたら味気ないのでは……。 中村 この世代には「トレンドが大好き」という一面もあります。しかも、そのトレンドを頑張ってキャッチアップして先取りするのが好きなんです。今の「旬」を楽しむことは好きだと思います。だから、今のノームコアブーム自体も、トレンドとして楽しめているのではないでしょうか。またこの世代は、現在アラサー以上なので、20代前半の頃とは違って、ブランドなどを厳選して、上質なものを買うことで満足する一面もあります。 前のページ123次のページ Amazon 『試着室で思い出したら本気の恋だと思う(幻冬舎文庫)』 関連記事 「服なんてそんなにいらない」若者たち、原宿ストリートファッションは本当に衰退したのか?化粧も加工も同じ――「NYLON JAPAN」編集長が語る、自撮り女子の自意識と“かわいい”の見せ方「小悪魔ageha」復刊! ナチュラル化するage嬢に一石を投じる“盛り”復権がテーマ“この先死ぬまで男に困らない”メイク本人気の裏側! お姉ギャルのモテ事情に“異変”戸川純、椎名林檎、大森靖子――“性”を歌う不思議ちゃんが勝ち得た、女子の生き方とは?