『サンリオデイズ』著者インタビュー

サンリオが女子カルチャーに与えた影響と、「いちご新聞」が“教えてくれたこと”とは?

2015/03/22 19:00
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『サンリオデイズ いちご新聞篇』(ビー・エヌ・エヌ新社)ではマイメロが表紙を飾った「いちご新聞」も紹介。(C)2013 SANRIO CO., LTD, JAPAN

(前編はこちら)

――『サンリオデイズ』を読むと、懐かしさから脳が一気に若返る気がします。書籍の中で、一番反響が大きかったページはどこでしょう? 

竹村真奈氏(以下、竹村) 懐かしグッズを集めた計20ページですね。現物はほとんどサンリオ内にも残っていなかったので、サンリオが発行している「いちご新聞」からスキャンして『サンリオデイズ』に掲載しました。この「いちご新聞」こそ、サンリオの財産なんですよ。キャラクターについて、「おともだちができました」「いもうとができました」「特技はクッキーづくりです」と新しい情報を教えてくれるのは、いつだって「いちご新聞」。ボツキャラだったゴロピカドンもいちごメイト(=読者)の反響によって救済されてスターになったり。キキララなどのキャラクターの名前を読者投票で決めたりもしていましたね。

――「いちご新聞」には、サンリオの社長さんが「いちごの王さま」というキャラクターとして、毎回登場していましたよね。

竹村 そう、いちごの王さまは優しさの塊なんです。かつて、サンリオショップのレジで「プレゼント用です」と伝えると、「プレミアム」と呼ばれるミニサイズのプレゼントをおまけで付けてもらえたんですね。それ欲しさに自分用に買ったものでも「プレゼント用」と嘘をつく小学生が増えてきたことに心を痛めた王さまは、「プレミアムはみんなにあげよう!」と決断したんです。ちょっといい話ですよね。ちなみに、この「プレミアム」は現在も続いています。それもすごいことだと思うんです。それに「いちご新聞」はいつも、王さまの真摯なメッセージから始まりました。「せんそうはダメだよ」「みんな仲良く」「いちごの王さまは平和を祈っています」といったような温かいメッセージです。そんな社長の元で誕生した子(キャラ)たちは、平和以外の何ものでもない! カワイイだけじゃなく、人として大切なことをサンリオは私たちに発信し続け、今もそれが全然ブレていないんです。


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「いちご新聞」で公開されたタキシードサムの履歴書も紹介。(『サンリオデイズ いちご新聞篇』より)(C)2013 SANRIO CO., LTD, JAPAN

――ところで『サンリオデイズ』の、10代、20代の読者からの反応はどうでしょうか?

竹村 70~80年代に絞った内容だったにもかかわらず、意外にも大好評でしたね。最近も「フレッシュパンチ」や「チアリーチャム」「マロンクリーム」のチェストやポーチといった復刻グッズが発売されましたが、ほんの数日で完売したんです。中でも特に人気だったのが「フレッシュパンチ」。当時のファンだけでなく、存在さえ知らなかったはずの90年代生まれの女の子たちも買っていたとか。今見ても、デザインがカワイイのはもちろんですが、彼女たちはあえて今、レトロなカワイイを楽しんでいる時期なんじゃないかなと思います。

――90年代生まれの女子のカワイイは、また違うんでしょうか?

竹村 80年代と90年代では、カワイイの基準が若干違っているような気がしますね。90年代は“強い女の子”や“女の子の毒っ気”に光が当たったのに対し、80年代は純粋に、カワイイものがそのまんま愛されていた時代。それが若い子たちには新鮮なのかもしれないですね。アニメとかなら今は昔の動画も気軽に見られるし、グッズなら復刻版も買える。自分が生まれた時代の中だけで無理して好きな物をみつけなくても、楽しく生きられるのが現代なんです。

――なるほど! 最後に、サンリオは、その後の女子カルチャーにどんな影響を与えたと思いますか?


竹村 やっぱり幼少期のうちに、カワイイの基準を植え付けてくれたのがサンリオだと思うので、現在カワイイカルチャーにまつわる何らかの作品を発信している方たちも、根底には同じ血が流れていると感じます。かつての“いちごメイト”たちが発信する側に成長し、心の原風景に従って、純粋に好きなものを作っているのかもと想像が膨らみますね。「女の子に生まれてよかった!」と幸福な気持ちになれる、カワイイの原風景は、サンリオからもらった一番の“プレミアム”なのです。  
(取材・文/城リユア)

竹村真奈(たけむら・まな)
1976年、高知県生まれ。ミニコミ誌「ヒヨコア」、雑誌「Far」(コアグラフィックス)編集長、グラフィックデザイナーを経て、2002年に編集プロダクション「タイムマシンラボ」を設立。女性カルチャー誌「Girlie」(アスペクト)の編集長を務める。著書に『サンリオデイズ』『サンリオデイズ いちご新聞篇‐「いちご新聞」から生まれたキャラクターのヒミツがいっぱい』『魔女っ子デイズ』(BNN新社)、『小さなお店、はじめました』(翔泳社)、『ファンシーメイト』(ギャンビット)など、著書多数。

最終更新:2015/03/22 19:00
『サンリオデイズ いちご新聞篇 ー 「いちご新聞」から生まれたキャラクターのヒミツがいっぱい (Sweet Design Memories)』
懐かしさで涙でページがめくれないよ……