サイゾーウーマンカルチャーインタビュー自撮り女子の自意識と“かわいい”の見せ方 カルチャー 「NYLON JAPAN」編集長編集長インタビュー 化粧も加工も同じ――「NYLON JAPAN」編集長が語る、自撮り女子の自意識と“かわいい”の見せ方 2015/02/07 19:00 インタビューNYLON自撮り戸川貴詞 戸川貴詞編集長 ――プリクラは友達との記念写真としての意味もあるので理解されやすいと思いますが、どうしても自撮りは自己顕示欲が強い人がする行為、もしくは「自己顕示欲が強い」と他人から思われてしまう行為のように感じます。 戸川 もちろん自己顕示欲が強い人もいるでしょうけど、そういう人は自撮りがブームになる以前からどこにでもいますよね。大半の人は、自撮りがそこまで特別なことだと考えていないということです。若い子たちにとっては、友達同士で「今日の服、かわいいね」「メイク変えたね」と言い合うなど、今まで顔を合わせて行っていた行為を、自撮りも含めてネット上でする。そんなライトな感覚。リアルでのおしゃべりも、インスタを見ていることを前提として話していますからね。いきなりこちら側が「すでに知っている」体で話題を振られて、「え、何の話?」と聞き返すと、「昨日、インスタにアップしたのに見てないの?」と言われたりする(笑)。本当に、日常のコミュニケーションと同じことなんですよ。自分と共感してくれる人と情報を共有したい……そこにあるのは自己顕示欲だけではありません。 写真をアップすれば、おのずと「かわいいと言われたい」「『いいね!』がたくさんついたらうれしい」という気持ちが出てくるでしょう。ただ、そこだけをことさらに取り上げて社会現象的にどうこうと語るのは、SNSが生活に欠かせないツールとなった今、疑問を感じますね。携帯電話が出始めのときもいろいろ言う人はいましたから、世の中が変わっていく過程でそういう話が出てくるのは仕方がないのかもしれません。街のストリートとネットを別のものと捉えると理解しにくいかもしれませんが、今の子たちにしてみれば、ネットの世界はリアルストリートと同じ感覚。好きな洋服、好きな食べ物、趣味が同じ子をフォローし合って友逹になっていくんです。 ――自撮りをする女性を叩く男性については、どう思いますか? 戸川 自撮りに限らず、トレンドやブームを叩く人は、いつの時代も必ずいます。「そういう女は自己顕示欲が強い」と言いたい……そういった批評ばかりを繰り返す人ほど、むしろ自己顕示欲が強い人なんじゃないでしょうか。結局、批評自体に誰ともなく共感されたいから、それをネットにアップするわけで。いろんな人とつながることができてチャンスも増えるのだから、しない理由がむしろわからない。もちろん「自撮りなんて面倒だからしない」「SNSは嫌いだからしない」というのは個人の自由ですが、わざわざしないことを主張したり、している人を叩いたりするのは逆の自意識過剰では。 ――編集長自身は、自撮りする女性を見て、正直「うわっ」と思ったことは一度もありませんか? 戸川 まったく思わないですよ。撮り方がうまいなと、いつも思います。斜め上から撮るとかわいく見えるなどの細かい工夫がいろいろあるな、と感心するくらいですよ。 ――今の加工技術だと、顔を小さくしたり、肌をきれいにするなどが簡単にできます。昔からある「かわいくなりたい」という願望から、現代は「かわいく見せたい」そして「褒められたい」という女子の欲望の変化が感じられます。 戸川 いや、変わっていないと思いますよ。写真を加工するのも、お化粧するのも同じようなことと感じているのではないでしょうか。技術の発達により、もっと完成度が高くきれいになれるというだけのことですし、そのバーチャルな感覚も、自撮りをする子にとって楽しみの1つ。「えー、そんなに変わるの!」と友達同士で楽しそうに加工しているところを見ると、「これは本来の自分とは違う」という抵抗感もそれほどないようです。 前のページ123次のページ Amazon 『NYLON JAPAN(ナイロンジャパン)2014年 12月号 [雑誌]』 関連記事 自意識過剰? 「1日2時間シャッターを切る」自撮りをやめられない女たち「ブスといじめた者への究極の復讐」“整形モンスター”ヴァニラは本当に異常なのか?「反オヤジマインドの敗北」――ギャル雑誌の衰退が女子カルチャーに残す課題戸川純、椎名林檎、大森靖子――“性”を歌う不思議ちゃんが勝ち得た、女子の生き方とは?磯山さやか『ぽちゃモテ!』に隠された、女に嫌われないモテ方の極意