サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ怪談×エロスの作家が語る“女の恨み” カルチャー 岡部えつ氏インタビュー 「セックスによって男を食い殺す女」怪談×エロスの作家・岡部えつが語る“女の恨み” 2015/01/08 17:00 インタビュー岡部えつ果てる紅筋の宿 ――なかなかにヘビーな体験ですね。 岡部 そのことを告げられたときには、もう彼のことを好きになってしまっていたので、引き返せず……嫌いになれたら、こんなに楽なことはありません。私にとっては最悪の思い出ですね。ただ彼は、「セックスとは、こんなにいいものなのか」と気づかせてくれた人なんです。誰にでもモテるような人ではなかったんだけど、ちょっと親密になると魅力が見えてくる人。二股問題がある一方、セックスのよさを知ってしまった……それがなければとっととケリをつけられたんですけど(笑)、そうこうするうち、彼の人間的な魅力もあって、結局7年付き合いました。彼が彼女ときっぱり別れられずにいたのは、1年くらいだったかな。もっと短かったかもしれないですが、感覚としてはそのくらいありました。 ただ7年の間、その付き合い当初のことは一度も忘れませんでした。別れるときも、そのことが頭にありましたね。最後まで、「2人の女にひどいことをした」という彼への恨みは持っていましたよ。男の人にとっては怖いかもしれないけれど、女ってずっと覚えてますよね。その場で許した体にはなっているけれど、傷のまま残っていて、何かのきっかけで疼くんですよ。 ――お相手の女性に対しては、恨みを抱かなかったんでしょうか。 岡部 なかったです。私より10歳も年下の女の子だったんですけど、彼女がつらい思いをしていると考えると、かわいそうで……。例えば、世に不適切といわれる関係(不倫)においてでも、気がつくと奥さんの方に思いを寄せてしまうんです。奥さんの立場に立ったとき、私はどう傷つくかななどと考えると、「ザマアミロ」とは思えない。だから自分の好きな男性に対して、「こいつ、なんてひどい男なんだろう」とも思いますし、「なんでこんな男のこと好きなんだろう」と我に返ることも。とは言いつつ、自分が罪悪感に苛まれるということもないんですが(笑)。罪は誰かを傷つけた人にあるわけで、妻を傷つけた罪は、ほかに気を移して妻をないがしろにした夫にだけあると思っています。 私、女が好きなんですよ。昔は大嫌いだったんですけどね。女子校出身なんですが、在学中、女同士の嫉妬や意地悪、立ち位置を確保するための駆け引きにうんざりして、男友達の方が多かったぐらい。だけど恋愛を重ねて、男がどういうものかを知り、自分の中にも女のドロドロしたものがあるとわかって、女が好きになりました。今では逆に、好きな男以外の男は全員嫌いですね(笑)。今、私が仲良くしている男性たちは、みんな「好きな男」です。 ――今後も、女の中にうごめく情念や恨みを作品にしていくのでしょうか。 岡部 やっぱり私は女の情念など、“女ならでは”のものが好きだし、もうしばらく書き続けると思います。自分の中にある恨みを変に膿ませて、世の中に毒を吐くのではなく、恨みを上手に飼いならして生きている女性っていますよね。あくまでも恨むのは男であって、ほかに転嫁したりしない。そういう女性に惹かれます。私の場合は、そこまで大きな恨みというのはないですけれど、恋愛中の小さな恨みのエピソードは、別れた後相手には言えないまま蓄積されていくわけじゃないですか。そういうものを血肉にして、作品に出していければと思います。 (構成/いしいのりえ) 岡部えつ(おかべ・えつ) 1964年大阪府生まれ、群馬県育ち。著書に『枯骨の恋』『新宿遊女奇譚』(ともにメディアファクトリー)『生き直し』(双葉社)などがある。『残花繚乱』(同)を原作としたドラマ『美しき罠~残花繚乱~』(TBS系)が1月8日からスタートする。 前のページ123 最終更新:2015/01/08 17:00 Amazon 『果てる 性愛小説アンソロジー(実業之日本社文庫)』 あたちも恨み上手な女になりたいものだわ~ 関連記事 骸骨を前にセックスに耽る――“過去の男”への深層心理を炙りだす『枯骨の恋』「駆け落ち」「熟女パブ」「別居婚」……波瀾万丈の女流官能作家が語るSMの扉を開いた男「一生セックスなしでも3日泣くだけ」官能を描く作家・南綾子、その意外なコンプレックス「男はバカ」と悟った初体験、不倫同棲、父との確執――官能小説家が明かす「セックスを書く私」『Red』が描く、不倫愛に陥ったセックスレス妻――彼女に感じる“愛おしさ”の正体とは? 次の記事 前代未聞の芸能界結婚・離婚ラッシュ >