サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ官能作家が語るSMの扉を開いた男 カルチャー 深志美由紀インタビュー 「駆け落ち」「熟女パブ」「別居婚」……波瀾万丈の女流官能作家が語るSMの扉を開いた男 2014/10/12 19:00 インタビュー深志美由紀美食の報酬 “セックス”をテーマの1つに小説を執筆している女性作家たち。彼女たちは男や恋愛、セックスに対して、人よりも強い思い入れ、時に疑問やわだかまりを抱えていることも。小説にして吐き出さずにはいられなかった、女性作家の思いを、過去の恋愛や作品の話とともに聞く。 【第3回】 深志美由紀/『美食の報酬』(講談社) ぱっちりと大きな瞳、すっと通った鼻梁。料理の腕前も夜のテクニックも最高の妻・輝美とともに幸せな結婚生活を送る堀川。しかし、「理想の結婚生活を見せてやる」と会社の後輩を家に招いた夜から、輝美の様子が一変する。不可解な行動を取りだした輝美に、堀川は――? ――短編集である『美食の報酬』から、表題作についておうかがいします。序盤、理想の妻として描かれる輝美ですが、実はとんでもない過去を持っていたという作品です。あこがれの男と結婚するためだったら手段を選ばない――そんな女の狡猾さが全面に出ている作品だ、と感じました。 深志美由紀さん(以下、深志) この短編集に収録されている6作品は、どれも“女の狡猾さ”が出ている作品ばかりです。私は男性の一人称で小説を書くことが結構あって、「男性が女性に騙される」という話を書くのが好きなんです。 それに私は、イヤな女の話を聞くのも大好き。例えば、「旦那が不倫してる」と友達に相談されたら、表面的には友達に同情しつつも、不倫相手の女に興味がわいちゃう。不倫中の女って、自分の矛盾点は棚上げして、自分自身をも騙して正当化していくイヤな面があるじゃないですか。私はそれに対して、「イヤな女だな」「バカだな」と思うのではなくて、「どうやって自己を正当化しているんだろう?」などと、考えてしまうんです。 ――『美食の報酬』もそうですが、最終的に男女関係で、女がマウントポジションを取るという作品をよく書かれていますよね。 深志 自分はどちらかというと、男にやられっぱなしでしたけど(笑)。世間の男女関係って、女の方がマウントポジションを取っていることの方が多いような……。私はそうでない分、マウントを取る女にあこがれます。そういう女は怖くも見えるけれど、怖いもの見たさでつい惹かれてしまうんですね。 ――深志さんが官能小説を書くにあたり、影響を受けたものはありますか。 深志 中学生の頃に読んだ、村上龍さんのSMをモチーフにした作品が、読書体験の中で激しく印象に残ったのだと思います。思春期に読んだエロを今でも引きずっているんです。『ゆっくり破って』(イースト・プレス)の主人公も、子どもの頃に見た父親所蔵のSMビデオに影響されM願望を持つようになった女性で、団鬼六賞優秀作を受賞した『花鳥籠』(無双舎)も、幼い頃に父親にいたずらされた過去を持つ女性が、少年と主従関係を結ぶというものです。 123次のページ Amazon 『美食の報酬(講談社文庫)』 関連記事 「一生セックスなしでも3日泣くだけ」官能を描く作家・南綾子、その意外なコンプレックス「男はバカ」と悟った初体験、不倫同棲、父との確執――官能小説家が明かす「セックスを書く私」『ゆっくり 破って』から考える、「三十路の処女はいかに“破られる”べきか?」『おれの繭子』快楽のための規律を破ったとき、男女関係はどうなる?「穴さえあれば女なんだ」、作家・花房観音が劣等感の末に見出した真実