サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ怪談×エロスの作家が語る“女の恨み” カルチャー 岡部えつ氏インタビュー 「セックスによって男を食い殺す女」怪談×エロスの作家・岡部えつが語る“女の恨み” 2015/01/08 17:00 インタビュー岡部えつ果てる紅筋の宿 『果てる 性愛小説アンソロジー』(実業之日本社) ――確かにこの女性には、不気味な強さを感じました。 岡部 強いかはわからないですけれど、根っこにあるのは恨みなのでは。『紅筋の宿』の女性は、恨みの象徴みたいなものかもしれません。私、女が一番強くなるときって、恨みを持ったときだと思うんです。恨みってものすごいエネルギーで、それによって奮起して大きな仕事をすることもできる。 男性は、自分の社会的地位を優先するから、自分を蹴落とした人などを恨んだりしますけど、女は愛した男や友人関係などの、身近な人に恨みを持ちますよね。男性が、自分を捨てた女性を怨むということもあるかと思いますが、男性はどちらかというと、自分のプライドを傷つけられたことに対して恨む。一方女性は、自分の愛情が裏切られたことに恨むというか……恨みの質が違う。私は女性の恨みがとても面白いと感じています。 ――セックスシーンでは、2人が狂っていくようで、とても惹きつけられました。「狂え、狂え、狂え、狂え」という言葉が男の頭の中にこだまする描写もありましたよね。女性の恨みがセックスによって爆発している印象を受けました。 岡部 この物語は、恨みの象徴のような女の家に、旅人の男がやってきて、女がその男を取り込んでゆく……という話なので、セックスによって男を食い殺す、とっちめるようなセックスじゃないとダメだなあと思っていました。男が女の折り指を「そんな気味の悪いもの」と言うシーンもありますが、女をないがしろにした男をいたぶる、というイメージでした。 ――女が縛られるというSMモチーフもありましたが、精神的に女性上位な印象を受けました。 岡部 私はあまりSMに詳しくありませんけれど、資料などを調べていると、実はSMの関係性で主導権を握っているのはMの方とはよく聞きますね。Mのどういたぶられたいかという願望のもとに、Sがいたぶっている……という構図らしいです。弱く見える方が実は主導権を握っている……自分の快楽のために、女が男を利用しているわけです。 ――今までの岡部さんの恋愛経験やセックスが、作品とリンクしていることはありますか。 岡部 私はたぶん、自分と関係ないものは書けないです(笑)。例えば『紅筋の宿』の男は、女をないがしろにしてきた過去を持っていたり、自分にとって不都合なことを自分以外のせいにしてきた男なんですが、今まで付き合ってきた男のいろんなエッセンスが混じってます(笑)。恋愛中は、「好き」という気持ちが勝っているから、相手に自分の不満をぶつけられませんが、終わった後に「なぜ終わりにしたか?」と、自問自答して浮かび上がってきたものを大事に取っておいて、小説で使うんですよ。例えば、これは男の性なのでどうしようもないんですけど、自分の社会的な地位を、恋愛よりも優先させる人はいましたね。 私は上京後、吉祥寺に住んでいるのですが、ずっと都心に住んでいる男性に、「よくあんなところに住んでいられるね」って言われたことがあります。彼にしてみれば、都心に住んでいることで、最先端の情報を手に入れているんだぞって誇りたいがために言ったと思うんですけど、私がムカッときていることには気づいていない。 ――ほかにも、「こんなことをされて腹が立った」というエピソードはありますか。 岡部 昔、付き合い始めた人に「実は、彼女がいる」と告げられたことがありました。長く付き合っている恋人がいたのに、私のことも好きになってしまったそうなんです。彼は悩みに悩んで申し訳なく思っていたようなんですけど、「どっちも選べない」と当事者である私に言ってしまうのは甘えですよね。多分、向こうの女の子にも言っていたんじゃないかな。 前のページ123次のページ Amazon 『果てる 性愛小説アンソロジー(実業之日本社文庫)』 関連記事 骸骨を前にセックスに耽る――“過去の男”への深層心理を炙りだす『枯骨の恋』「駆け落ち」「熟女パブ」「別居婚」……波瀾万丈の女流官能作家が語るSMの扉を開いた男「一生セックスなしでも3日泣くだけ」官能を描く作家・南綾子、その意外なコンプレックス「男はバカ」と悟った初体験、不倫同棲、父との確執――官能小説家が明かす「セックスを書く私」『Red』が描く、不倫愛に陥ったセックスレス妻――彼女に感じる“愛おしさ”の正体とは?