サイゾーウーマンカルチャーブックレビュー出産前の息子から「地球を守れ」と指令……山田まりやに宿る自然派志向を超えた“なにか” カルチャー [連載]ここがヘンだよ子育て本! 出産前の息子から「地球を守れ」と指令……山田まりやに宿る自然派志向を超えた“なにか” 2014/12/07 16:00 ここがヘンだよ子育て本! 『食事を変えたら、未来が変わった!』(山田まりや、キラジェンヌ) 【第1回】 山田まりや『食事を変えたら、未来が変わった!』(キラジェンヌ) <総合評価(10点満点)> 母性賛美度★★★★★★★★★ お花畑度★★★★★★★ オシャレ度/自然派志向度★★★★★★★★ 実用度★★★★ 【寸評】 初回から申し訳ないのですが、本書は実は子育て本ではなく、「健やかエンジョイ中庸ライフ」をオススメする本であることをお断りしたい。ただその中核にあるのは、無視することさえできない、山田の独特の子育て観なのだ。この「健やかエンジョイ中庸ライフ」のすごいところは、何度読んでもその定義がいまいちわからないところである。マクロビオティックや、漢方や薬膳のいう「陰陽」といったナチュラルな生活を全体として呼んでいるのだろうが、マクロビや漢方のオシャレなイメージを破壊する「健やかエンジョイ中庸ライフ」と名付けるセンスが、もしかしたらこの本の一番の見どころなのかもしれない。 グラビアで一時代を築き、元気なお姉ちゃんキャラで仕事はしてきたけど、気づけば食レポばかりで体調は絶不調、そんな時に出会ったのがこの青汁……ではなく、「健やかエンジョイ中庸ライフ」という魔法の食生活。読者にもこの幸せを伝えたい。そんなピュアな信仰心が随所に垣間見える。「オシャレでナチュラルライフをしてみた~い」と軽い気持ちで読むと、ヨガを習いに行っただけなのにヘッドギアかぶせられたくらいの衝撃を受けること間違いナシ。自然派出産&子育てをアイデンティティにしたい方にしか読みこなせない、人を選ぶ1冊。 ******* 山田まりやに対して正直さほど興味がなかった人も、一昨年末に突如報じられた「パーティー出産」には度肝を抜かれたのではないでしょうか。女優の川島なお美やカーヴィーダンスで知られる樫木裕実ら、見事に業が深そうな友人たち十数人に囲まれながらの立ち会い出産。ここが人生ミエの切りどころとばかりに、出産で勝負に打って出た山田まりや。そんなパーティー出産新規のお客様が軽~い気持ちで読み始めると大変ショックを受けそうなのが、こちら『食事を変えたら、未来が変わった!』です。 母性賛美度はほぼ満点に近い★9つ。「母性」という言葉はそれほど多用されてはいないものの、その代わりに「本能」「幸せ」「愛」「ご縁」「試練」など抽象度&宗教度高めな言葉が、じりじりと読者をコーナーへと追い詰めます。だって女ですもの、「母性」があるのなんて当たり前。「カラダクリーニング」なる食事療法で「丈夫で元気な子供を産むためにも、3年かけて体を生まれ変わらせようと決意」、「お腹の中に赤ちゃんがいるとわかった瞬間から『私の食べた物、摂取したものは全て赤ちゃんに直結して入っちゃう! 私のせいでアトピーやアレルギー体質になっちゃったら申し訳ない!』と思えた」。そしてそれは「女性としての本能によるもの」であると熱く語るのです。アトピーもアレルギーも母体由来とは決して限らないのですが、“健康”に取り憑かれた人間にはそのように映るのでしょうか。 しかしマクロビ信仰をはるかに上回る驚きを与えてくれるのが、「まだ見ぬ息子からのメッセージ」です。胎児とお話ができるという出産界のイタコ、その名も胎話師(たいわし)を通じ、おなかの子どもが山田に送ってきたメッセージが丸文字フォントで紹介されています。これがまぁ胎児とは思えぬほど老成しています。山田のつらい過去をズバリ言い当て「でも、大丈夫。これからは、自分の力で表現力を解放できるようになるから。ママは僕をお腹に迎え入れてくれたことで、そのステージに来たんだ」と、まるでねずみ講のやり手販売員のように言葉巧みに山田の人生をジャッジ。全てを見知り、全てを悟ったこの胎児様からのメッセージですが、最大のクライマックスは間違いなくここでしょう。 12次のページ Amazon 食事を変えたら、未来が変わった! (veggy Books) 関連記事 妊娠を機に明るみになる、「わかり合えない」という夫婦の現実「ひよこクラブ」の荒ぶるレイアウト! 50人の赤ちゃんとうんちを並べる夫の性欲処理にお金を請求! 「たまひよ」の新造語「鬼妊婦(オニンプ)」泰葉母、スザンヌ母に遠く及ばず!? 新米ママ・辻ちゃんのうす~い母性古典に育児放棄の記述も! 「昔はよかったのに」という幻想を暴く