マルコムの認知症もショックだったのに……

ドラムが逮捕された「AC/DC」、不幸の積み重ねに「呪われたバンド」説も浮上

2014/11/07 18:45
acdc01.jpg
「AC/DC」公式ホームページより

 70年代にオーストラリアで結成された世界最強の伝説的ハードロックバンド「AC/DC」のドラマー、フィル・ラッドが6日、殺し屋を雇い人を殺す計画を企てていた疑いで逮捕された。米ゴシップ芸能サイト「TMZ」が報じた内容によると、ニュージーランド警察は、男性2人を殺害するために殺し屋を雇おうとした殺人予備罪と、メタンフェタミン(覚せい剤)およびマリファナ所持でフィルを逮捕。有罪となれば最高で禁錮10年の刑に処されるとのこと。AC/DCは、「フィルが不在でも、新作アルバムやツアーのスケジュールには影響ない」という声明を出しているものの、バンドにとって大ダメージだと心配する声が多く上がっている。

 スコットランドからの移民一家に育ったヤング兄弟が1973年に結成したAC/DCは、リズムがとりやすく、いつまでも耳に残るサウンド、男性からの共感を得やすい歌詞、リードギターのアンガス・ヤングが飛び回り、のたうち回り、尻を見せるハチャメチャなパフォーマンスなどがウケて、1975年にリリースしたセカンドアルバム『T.N.T.』が大ヒットした。翌年にはアトランティック・レコードと契約を結び、世界に進出。「地獄のハイウェイ」「狂った夜」「サンダーストラック」など音楽史に残る名曲を数多く生み、全世界のアルバム総売り上げ2億枚を達成。プロも認めるカリスマバンドとなった。

 聞けば聞くほど魅力の増すバンドとして知られるAC/DCだが、誤解されることが多いバンドとしても知られている。80年にリリースしたアルバム『バック・イン・ブラック』に収録された「スリルに一撃」を繰り返し聞いていた高校生が、口に銃口を入れて拳銃自殺したり、首吊り自殺をする事件が相次ぎ、遺された親が「曲の“やれ! やれ!”は自殺しろと呼びかけているものだ」とバンドを訴える騒ぎにまで発展。「AC/DCはティーンに自殺を促す恐ろしいバンド」と白い目で見られるようになった。

 85年になると、AC/DCのTシャツやキャップを身につけた「悪魔崇拝者」を名乗る米連続殺人鬼リチャード・ラミレスが、「AC/DCの曲にインスパイアされて殺した」と供述。このことで「AC/DCは悪魔崇拝バンドだ」という烙印を押され、長らくバッシングされることになる。

 89年にはアメリカ軍から「AC/DCの音楽は爆音というか轟音。ぶっ続けて聞かされれば精神的におかしくなる」と認定され、パナマ独裁者のノリエガ将軍捕獲作戦に採用。隠れ家に向かって2日間ぶっ続けでAC/DCの曲を大音量でかけ、見事降参させたことで「独裁者の気も狂わせるバンド」だと大きなニュースとなった。ちなみに爆音は今も変わらずで、2009年にドイツのミュンヘンでコンサートを行った際には、半径19キロ圏内の住民たちから「夜遅くまで爆音が聞こえてうるさい!」と100件以上もの苦情が寄せられている。


 このように物議を醸すことの多いAC/DCだが、バンドの顔であるアンガスはプライベートでは物静かで穏やかな人物。ステージではハイになっているような恍惚とした表情でハイパーに動き回り、還暦近い今でも薄毛の天パ頭に悪魔の角をつけて観客を煽るが、酒は一滴も飲まないというロッカーらしからぬ地味な私生活を送っている。

 バンドのブレーン的存在だったヤング兄弟の兄マルコムも物静かな男。真面目な性格がたたり、やる気がうせたときにアルコールに手を伸ばしてしまい、依存症になってしまったこともあった。依存はツアーに参加できないほどひどくなったが、弟のアンガスに支えられて、リハビリで見事克服。復帰を果たしたのだが、今年春頃から「マルコム重病説」が流れるように。バンドは、このことについて沈黙を守ってきたが、9月にマルコムが認知症を患い施設に入所し治療を受けていること、バンドを脱退することを発表。ファンに大きな衝撃を与えた。

 まだ61歳という若さなのに、マルコムが認知症で脱退するという報道は、デビュー当時からAC/DCを応援しているファンにとって、80年の「ボン・スコット急死」に次ぐショッキングなニュースだった。

Rock Or Bust