噂の女"神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第208回】

日本初「肥満治療薬」のダイエット効果に沸く女性誌、その“非現実的”な側面

2014/02/04 21:00
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「女性自身」2月18日号(光文社)

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

第208回(1/31~2/4発売号より)

 内閣府のエリート職員の変死事件は一体何なのだろう。ソウルに出張に行ったはずなのに、北九州沖で遺体が発見された。近くにはゴムボートが。しかも韓国では偽名も使い、ゴムボートを購入。釜山へ行き、出国した形跡はなし。日本政府はまともな対応をしているようには見えない……まるでスパイ映画ではないか! 国家謀略に巻き込まれた? 麻薬などの犯罪絡み? 妄想が膨らむ“事件”である。

1位「3日連続“脂ざんまい”でも1.4kg痩せちゃった!」(「女性自身」2月18日号)
2位「聖子 切ったはずの元恋人とロスへ! 追いかけた夫の憂鬱」(「女性セブン」2月13日号)
3位「揺れる『いいとも』後番組のMC候補 売れっ子芸人たちが続々内定も 大本命中居が渋る深~いワケ」(「週刊女性」2月18日号)

「マジで今週はろくな芸能ネタがない」。そう思って3誌を読んでいたのだが、「自身」の記事に釘付けになった。それが1位のダイエット記事だ。

 女性週刊誌にはダイエットはつきものだ。多くの女性にとって綺麗に痩せることは至上命題で、楽に痩せたいというのは1つの悲願だと思うだから。だがその多くは、サプリの広告だったり、バナナや、特定食品による、食事制限ダイエット方法だったり、カービーダンスのような体操法だったり――。これらが本当に効果があるなら、そして本当にリバウンドもしないのなら、とっくの昔にみんな健康的に痩せて、世の中からサプリ商品だけでなく「ダイエット」という言葉自体も不用になるはずだ。でもそうならない。いくらたっても世の中には「ダイエット」の存在がなくならないどころか、新たなダイエット方法やらサプリ広告がますます氾濫している。


 もちろん私自身もこれまでいくつかのサプリを飲んだこともあるし、カービーやブートキャンプにも飛びつき“入隊”したこともあった。しかし、最初は少し効果があったりもするが、何年も続けることなんてできないし、いつの間にかリバウンドを繰り返してきた。やはり楽して痩せなんてあり得ないし、サプリなんて気休め。ダイエットは我慢と根性しかない! 長年の経験から、そう結論付けてきた。

 しかーーし。楽して痩せるという夢のような薬が存在する、という驚くべき記事を今週の「自身」が掲載した。その薬とは「オブリーン」というものらしい。なんでも脂質吸収を抑える薬で、食べた脂肪分の30%が便と一緒に輩出されるという。だがここまで読んでもあまり信用できなかった。だって同じような文言の怪しい薬を飲んだことがあるが、全然効かなかったから。だが「オブリーン」の発売元は武田薬品工業だという。武田薬品といえば、日本で一番売り上げの高い由緒正しき製薬メーカーである。しかも日本で初めて保険適用される“肥満治療薬”。ってことは厚生労働省もお墨付きでもある。薬事法に抵触することを恐れ「効果には個人差があります」なんて但し書きエクスキューズが入ったサアプリとは違う。お医者さんで処方箋を貰ってしか入手できない由緒正しきダイエットのお薬! 

 BMI(肥満度)25以上で、2型糖尿病と脂質異常症を持つ場合という条件らしいが、保険適用されない場合でも体に悪影響はないというのだから、否が応にも期待が膨らむ。さらに記事にはこれを服用した女性記者の体験記が綴られているのだが、それもまた衝撃的だ。

 34歳で身長161センチ、体重54キロ、BMI21、体脂肪率30%超という究極の個人情報を晒した女性記者の体当たり体験だが、1日目には焼肉に生ビールなど4,000カロリーを摂取、2日目もスイートポテト、ビールにつけ麺、餃子、煮込み豆腐、焼き鳥などを平らげ、3日目には天むす、から揚げ、カツどん、深夜にビール、ケーキにポテチ、ブリトー――。3日合計で9,000カロリー以上食いやがった! なのに、なのに――1.4キロ痩せたらしい。30代女性基準の倍以上のカロリーを摂って、この結果なのだ。本当なら、素晴らしい!

 だが、気になる記述も。オブリーンは発売時期が未定で、薬価も決まっていないというのだ。だから女性記者が体験したのは類似品で日本では未承認の「ゼニカル」を服用しての“結果”である。それでちょっと調べてみた。するとこの薬、昨年の中央社会保険医療協議会での協議は持ち越され、発売延期になっていたのだ。その理由は体重減が2%と「効き目がない」とされたのだという。協議会で拒否されるのは“異例”でもあるらしい。なんだか雲行きが――。「自身」では「いよいよお披露目される見込み」とまで言い切っているが、やはりなにか裏のあるパブ記事か? すごく期待したのがバカだった。発売延期? たったの2%減? 裏切られた気持ちだ。でも、ここまで気持ちを引っ張られたのだから、もし発売されるなら入手してみたい。こうなったら、意地だ! また騙されたら――報告したい。


『Tarzan (ターザン) 2014年 1/9号 [雑誌]』