『閉経記』刊行インタビュー

女は閉経で刷新される? 伊藤比呂美が語る女の性と『閉経記』

2013/06/09 19:00

―――大人になれない、なりきれないままで、いつまでも娘でいてはいけませんか?

伊藤 この本で母のことを書きましたが、私の場合は「親を送る」というのは、親元を離れた大人の女がもう一回娘になり直して、自分の親との関係をきっちりとらえ直して、納得して送り出す、という感覚でした。これは、人生で必ずやらなければいけないことのひとつかなと思うんです。親が老いて、上下関係が崩れ、すべてを自分が按配するようになっても、母は母、父は父、私は娘。でも納得して送り出したら、残ったのは娘ではなく自分だった。こうして私は自分に直面できたと思っています。親元から離れずにいる女は、ずっと娘のままで、「自分は自分」と見つめきれずに、親が死んでしまうかもしれないでしょう? 一度客観的に見た方がいいのでは、と思うことはありますね。人それぞれ事情があるとは思いますが。

―――親の介護や更年期への不安どころか、そのだいぶ手前でくじけて、現状の不安が山積みです。結婚できないとか……。

伊藤 結婚こそ不安定で、そんな穏やかなものではないですよ。男は金太郎飴みたいなもので、切っても切っても同じ。一緒に暮らしてしばらくすると、みんな同じような距離感になりますから。私がコミュニケーション不全だと思っていても、相手は十分に満足するコミュニケーション度だったりする。夫もそうだし、亡くなった父も同じでした。この本を書いているうちに「男とはこういうものだ」というのがわかった気がしています。「見るべき程の事を見つ」(見るべきものはすべて見てしまった)と言った、平知盛の心境ですね(笑)。もちろん、それなりの尊敬心と愛着は、お互いに感じているけれど。

―――ほかの男性に目移りすることは、もうないんですか?


伊藤 まったくないですね。一時期、V6の岡田准一にだいぶハマったけどね(笑)。ドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系)で、岡田准一と長瀬智也が西田敏行をめぐって三角関係(息子と弟子と父)という構図がよかったの。そこから今度は西田敏行にハマりましたねぇ(笑)。その後はラッセル・クロウとかケビン・スペイシーとかね。クリスチャン・ベールにもハマったけど、もう抜けちゃったし。

―――この本の中でも数々のモノにハマっていく様子を赤裸々に書いていました。数独、薄皮クリームパン、書道、コンブチャ(紅茶キノコ)、麹……。

伊藤 ハマりやすいんです(笑)。今はズンバかな。ラテンの音楽にのせて腰を回して踊り狂うエクササイズですが、汗がだらだら出て、終わった後の“温泉感”がたまらないの。コンブチャはね、サルノコシカケをソフトにしてどろっとさせたようなモノ。そのヌルヌルッとしたものが喉を通る時は、精液か鼻水をもっと寒天質にした感じ? それがちょっと嫌なんですよね。嫌なんだけど、「あーコレ知ってるわ」みたいな感じ(笑)。飲むと全身が活性化して、あらゆる細胞がウズウズとする感覚です。

『閉経記』