『閉経記』刊行インタビュー

女は閉経で刷新される? 伊藤比呂美が語る女の性と『閉経記』

2013/06/09 19:00

―――更年期を経たということで、率直に聞きます。今、男は必要ですか?

伊藤 建前としてはそうですね。本当はもうどうでもいい(笑)。セックスを卒業してもいいな、という気持ちにはなっています。たぶん卒業しないでしょうけれど。昔のように、自分から狩りに行くのは面倒くさくて嫌だなぁと。でも、まあ、来る者拒まず、ですが(笑)。

―――「面倒くさい」は、若い世代にも蔓延しています。

伊藤 セックスって面倒くさいですからね。セックスには、決まりきった男と女の役割を演じなければいけないという妄想を抱いているでしょう、男も女も。その演じる面倒くささがセックスを止めているのかなと思いますね。自分であることを変えたくないのに、いったん自分をなくさなければいけないから。「若い人たち」こういう言い方をするとすごいババクサイから嫌だけど(笑)、若い人は自信がなくて、嫌われたくない、失敗が怖い、というのもあるでしょうね。

―――他人を気にしすぎて、空気を読みすぎる傾向もあります。

伊藤 それは日本文化そのものでしょ。私はカリフォルニア在住だけれど、日本の読者向けに書いているし、日本文化がどんなものかを知るべく、日々精進しております。「サイゾーウーマン」も読み、日本の芸能人が何してるかってことも読み(笑)、日々研鑽を怠らぬようにしておりますが、日本の女たちの閉塞感を「大丈夫かな」と思うことはあります。セックスレスしかり、女の幼児化しかり。

―――日本の女性たちは、どんな印象ですか?

伊藤 ファッションで言えば、アメリカの女は「これでもか!」ってくらい、女を出すの。出し過ぎじゃないかと思うくらい、胸元を出したりね。でも、日本の女は胸もへそも出さないし、袖は長いし寸胴だし、「私は無垢よ、責任ないのよ、性的に対峙できないわよ」という方向にいっちゃってる気がします。立ち居振る舞いも同じ。アメリカの女は大股でオッサン歩き、日本の女は手で膣を隠すような立ち方なのよね。「なぜ隠さなければならぬ!」って思いますよ。日本の男は男で、尻子玉抜かれたような立ち方だしね(笑)。

―――そんな女たちでも「漢」になれますか?

伊藤 大丈夫。日本の女たちも55歳くらいになったら、みんなひと皮もふた皮も剥けますから。今現在抱えている悩みなんて、55歳になったらなくなる、それくらいラクですよ。素晴らしいことでしょ? ナチュラルなフェミニズムというか……自然に、いつの間にか備わってくるのよ。例えるなら、カビから自然とペニシリンができる、みたいな(笑)。

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