[連載]悪女の履歴書

「男の従者」という解釈と戦った女兵士――「東アジア反日武装戦線」もうひとつの闘争

2013/05/07 21:00
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Photo by k14 from Flickr

(前編はこちら)

■闘争運動にも横たわる男女の役割

 筆者の周囲にも全共闘世代の“おやじ”が数多くいるが、「学生運動、闘争は出会いの場」でもあったらしい。闘争する男を助ける女――当時はそんな構図もあった。実際、デモや闘争をするのは男子、女子は男子のために食事を用意する。時にはアパートで休息をとらせる。女は「アジトと食べ物とセックス要員」といったことも実際にあったらしい――そのため、学生運動をきっかけにウーマンリブ運動が日本でも起こったほどだ――。当時「愛と革命に生きる」という言葉が流行ったというが、東アジア反日武装戦線の女たちを見ると、彼女たちの思いとは別に、当時の男女の役割の構図を見るようで切ない。というもの、彼女たちは共通して医療や薬品に関する知識を持っている。そのため爆弾の原料調達を行ったとされるが、これが偶然なのかどうか――。

 こうした疑問を解く有力な資料は残念ながら見つかることはなかった。だからといって、政治の時代に翻弄された女たちと片づけられるものではない。多くの女子学生が全共闘運動に接する中、なぜ彼女たちは東アジア反日武装戦線の考えに共鳴していったのか。だが、政治の季節といわれた当時の報道さえも、この疑問には答えてはいない。例えば、既に休刊した「ヤングレディ」(講談社、1975年6月9日号)の「恐怖の爆破犯女3人の赤裸々な私生活」記事では、こんなサブタイトルが掲載されている。「調べれば調べるほどなぜ彼女たちがあの過激な犯罪に走ったのかわからなくなる」と。そして、大道寺あや子がかつて働いていた医院の医師の話として「彼女が夫を愛していただけに、ずるずると従った。そう思えて、ならないんです」という証言を取り上げている。また同号には、荒井まり子の恩師に当てた手紙が紹介された。

「先生は政治的なこと、社会的なことについて何も教えてくだされなかった。こんなに私たちが社会に出て直面する問題が山積みしているのに、センセイは真実をかくしていたのではないでしょうか。尊敬する私の父も含めて…」


 内に秘めた強烈な思い。世の中の矛盾に対し、あまりにもウブであり、また真摯だったとしか思えてならない。

『女神列伝 女子プロレスパーフェクトガイド1950~2011』