[女性誌速攻レビュー]「STORY」4月号

「STORY」が考える、ジャニコンで“目線をもらう服”は「全身ベージュ」!?

2013/03/26 16:00
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「STORY」2013年4月号/光文社

 「STORY」4月号(光文社)の特集は、「出会いの季節、『人にやさしく』映る服大研究!」。タイトルには、「ママとして、働く40代として。“みんなにモテる”には戦略が必要です」という文章が添えられています。ここでの“モテる”の対象は、異性ではなく同性であるママ友が中心。若い頃は男にモテる服装を意識し、中年になったら女にモテる服装を意識して生きなければならないのです。面倒くさいですよね。たいていの女性が「ああ~っ、めんどくせー!」と思っているはず。だから、「STORY」のような雑誌がマニュアル化してくれると助かるわけですよ。

<トピック>
◎特集「出会いの季節、『人にやさしく』映る服大研究!」
◎ひそかな「エア恋心」が特別なオシャレの言い訳
◎華原朋美さん(38)「愛で絶望した私が、愛に救われるまでの2350日間」

■いっそママにも制服があれば楽なのに

 というわけで、特集「出会いの季節、『人にやさしく』映る服大研究!」を詳しく見てみましょう。幼稚園組、小学校組、中学校組と、子どもの属性別に分けられ、出会いの場にふさわしいファッションの実例が掲載されています。例えば、幼稚園組は「入園式後のお迎えは、『はじめまして』の挨拶から、ママ友に発展するチャンス。ベージュ、グレーなどのやわらか色のトップできつい印象を避け、コンサバにまとめます」とのこと。登場しているママモデルは次のように語ります。

「自分から声をかける勇気がなかなかないので、声をかけてもらいやすい印象にしたくて、清楚で温かみのある服を選びました」
「長いお付き合いになるので最初に周りから浮いたり目立ちすぎるのは避けたいと思います」


 次に、小学校組は「初めての保護者会はママ同士が改めて自己紹介をする大切な機会。第一印象で話しづらいお母さんと思われないために、細心の注意が必要」とのこと。小学1年生といえば、安全に登校できるか、いじめられないか等々、いろんなことに注意が必要な時期ですが、「STORY」的には「話しづらいお母さんと思われないために」細心の注意を払わねばなりません。登場するママモデルは、

「他のママたちから話しかけてもらいやすいような雰囲気を出せる、やわらかい印象のアイテム選びに気を使いました」
「角のない印象にしたくて優しいレース素材を選びました」

 と語っています。ここまですべて受け身の無難一直線だったママたちですが、中学生組になると「幼稚園や小学校のママつながりは濃厚。楽しいけれど子供に直結しているから、行動も洋服も“無難にみんな一緒”が基本。でも中学になると子供は子供。だから私も自分らしさを出したい気分。ママ友の枠を超えた女性同士として新しい出会いを楽しみましょう」と突如個性の発揮を提案しています。「中2の3学期からカバンつぶしていいよ」的な、ママ界の謎のドレスコードです。

 この手の特集を読むにつけ、「STORY」読者は、本当は「おしゃれ」が好きじゃないんだなあと思ってしまいます。ファッションに関して、完全に主体性ゼロなんですもん。ま、それは仕方がないことですよね。読者層は子育てに忙しい世代。そんなに我が身に費やす時間なんてありません。それに、子ども主体のお付き合いに、ママの個性を主張したっていいことがないのも事実。冒頭でも述べたように、自分でいちいち考えるのは面倒ですから、無難でそこそこ好感を持ってもらえる服装がマニュアル化されていればいいわけです。子育て期間は、私を殺す期間。そこのツボをよく抑えている企画だと思います。

 ただ、おしゃれを面倒くさがっている割に、服に過剰な期待を寄せている点は考えもの。「自分から声をかける勇気がない」というオドオドしまくりの中年女性が、幼稚園、小学校での薄~いお付き合いを経て、子どもが中学生になって「ママ友の枠を超えた女性同士として新しい出会い」なんて高度な社交を楽しめるものなのでしょうか。いくつかアクセをプラスしたからって、対人関係スキルがアップするわけではありません。子どもの9年間は成長が著しいものですが、40代の9年はよほど意識しないと大した成長は見込めなさそう。まず自分から声をかける勇気を持つか、さもなければ、孤立を恐れない精神力をつけなきゃ。じゃないと、いずれ「今日何着ていこう?」以上に深くて暗い悩みにハマりそうです。


『STORY』