サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「STORY」バーキン特集が厄介 カルチャー [女性誌速攻レビュー]「STORY」3月号 「STORY」に倣い、バーキンに糞取りスコップを入れる40女の美学 2013/02/20 21:00 女性誌速攻レビューSTORY 「STORY」2013年3月号/光文社 今回は、「STORY」3月号(光文社)を読んで、STORY読者におけるブランドとプライドについて考えてみたいと思います。「STORY」においては……というか、昨今の女性の間では、全身ハイブランドで身を固めることは「ファッショナブルではない」とされています。かといって、プチプライスだけもダサい。ハイブランドとプチプライスを組み合わせたり、あるいは全身ハイブランドの日もあればプチプライス中心のカジュアルデーもあったり、と高・低価格を取り混ぜたスタイルがヨシとされています。その要因の1つとして、バブル崩壊後、日本の経済状況に合わせて、そういう感覚が培われてきたというのがあるのでしょう。 そこには、“ハイブランド品も持っている=裕福である”というプライドと、“プチプライス品も持っている=ブランドロゴに左右されないセンスと賢さがある”という2つのプライドがあり、両方そろって初めて「本当に豊かな奥さん」となれるわけです。最終目的が「豊かさ」なら、素直にハイブランド品だけ身につけてればいーじゃねーかと思うのですが、それだけでは女友達から嫌われたり、バカにされたりします。そういう時代です。 実際、「STORY」にも、50万円超のシャネルバッグを紹介しているページもあれば、1990円のオールドネイビー(GAPのさらに低価格ブランド)のパーカーを紹介しているページもあり、うまくバランスが取れています。その上、「プチプライス」を「プレプラ(=プレシャスプライス=価値ある安さ)」とわざわざ言い換えて、よりダイレクトに読者の自尊心を満たす仕掛けになっています。そうして女心を刺激したりなぐさめたりしている女性誌、それが「STORY」なのです。 <トピック> ◎特集「40代の早春服は、暖かさを犠牲にしません!」 ◎新説!「40代こそバーキン適齢期」 ◎人気色No.1、「プレプラなピンク」からはじめよう! ■わざわざ重いバッグを持って散歩する理由 前述のようなことを考えたのは、「新説!『40代こそバーキン適齢期』」という企画を読んだからです。5ページのミニ企画ですが、「STORY」読者の本質をよく表している企画でした。 エルメスのバーキンといえば、IKKOや森公美子、林真理子などなど、美を追求する著名人に愛用者が多いバッグです。最低でも100万円以上、ものによっては数百万~1千万円することも。その上、人気が高く入手困難。それがSTORY世代に「愛用者が急増中」とのことで、実際に愛用者の方々が登場し、バッグへの思い(≒自慢)をアツく語っています。 「私にとってバーキンは気高くいられるマストアイテム。(中略)パーティシーンから、普段の犬のお散歩まで、どんなスタイルにもしっくり馴染むバーキンは、私の生活に欠かせません」 「ジェーン・バーキンのようにあえて無造作にカジュアル持ちが私のこだわり。Tシャツにデニムやニットパンツなどで」 「仕事の打ち合わせでジャケットを着ていて、大急ぎで帰って、デニムに着替えて息子とお出かけなんて時もバッグはバーキンのままでOK!」 「最近、バッグの本質が見えてきて、バーキンと向き合える年齢になったと実感しています」 どんだけ~! と思わずIKKOギャグが口を衝いて出そうになります。犬の散歩にお持ちの方は、中に糞取りスコップを入れておられるのでしょうか。糞を取ってもバーキン。まさに、「気高くいられるマストアイテム」です。みなさんのおっしゃりたいことをまとめますと、“高価だからといってバーキンが汚れないようにビクビク持つのはダセー”ということ、逆に、“あえてラフに持つ私はステキ”ということです。“数百万円のバーキンを持っている=裕福である”というプライドと、“カジュアルに持つ=ブランドに左右されない”という2つのプライドを叶えるモノがバーキン。「値段に捉われずモノの本質を追求したら、いつのまにかバーキンに辿り着きました」的な、バーキンは女の終着駅なのです。 本質。バーキンの本質とはなんなのでしょうか。糞取りスコップを入れることが本質なのでしょうか。「バッグの本質が見えてきて、バーキンと向き合える年齢になった」とコメントしている方がいますが、前述すべての「バーキン」という語を「IKKO」か「モリクミ」か「林真理子」に言い換えて考えると、より明確にバーキンの本質が見えてくるような気がします。 ■黒のバーキンは女子校ママのユニフォーム!? 企画の最後にはモデルとスタッフの座談会があり、そこでこんな話が語られていました。 「付属小ママたちの間では、圧倒的に30cmが支持されているんですよ。(略)女子校ママの話では、保護者会に行くとユニフォームのように黒の30cmバーキンをみんな持っているんだって!」 「私はみんなと一緒は嫌だから、自分なりに個性を出して使いたいな」 「ステッカーをベタベタ貼って無造作に持っているジェーン・バーキンはカッコよすぎます」 「バーキンはそれだけで存在感があるから、気負わずさりげなく持ちたいですよね」 「10代20代で憧れていたバーキンも、自分流に使いこなせる余裕ができたってことですね」 “付属小ママ”“女子校ママ”への怨念にも似た憧憬の念をあらわにしつつ、“みんなと一緒は嫌”というちょい見下し目線も隠さず、だけど“ガイジンの真似はしたい”という欧米コンプレックスもチラ見させつつ、気負い十分なのに“気負わずさりげなく”と必死で我が身をなだめ、最終的には“自分流に使いこなせる余裕ができた”という自己肯定でフィニッシュ。「STORY」読者の面倒臭さ、40女の面倒臭さ全開です。 バーキン1つにここまで振り回されていたら、本当の意味で「気負わずさりげなく持つ」なんて無理だと思われます。ご存知ですか、森公美子はバーキンコレクションすべてに油性ペンで名前を書いているそうですよ。本家JBを上回る無造作感じゃないですか! エルメスは、日本でのバーキンの販売名を「モリクミ」に改名すべきです。そうすれば、日本女性は心底気負わずさりげなく持つことができて、自分流に使う心の余裕ができるはずです! というわけで、「モリクミ」語りが長くなってしまいましたので、今回はこのへんで終わりにします。バッグ1つに隠された、虚栄と現実の痛々しい攻防戦を感じていただければ幸いです。女って大変でしょ。大特集「40代の早春服は、暖かさを犠牲にしません!」は実用に徹していておもしろかったです。「人気色No.1、『プレプラなピンク』からはじめよう!」は、林家パー子化しがちな中年の危険なピンクを“プレプラ”でお試しするという企画。プレプラと言いつつオーバー1万円の商品も紹介されていますが、プレプラ服の使い方としてアリだなと思いました。 (亀井百合子) 最終更新:2013/03/28 17:54 Amazon 『STORY』 細木数子、神田うの、美川憲一もバーキン好き★ 関連記事 「STORY」礼服企画、「K應のお母さんのヒールは●●」という細かすぎる規則ノロケしかない「年下婚」特集にみる、「STORY」世代のオカン力の強みプリプリも登場! 10周年の「STORY」が手放した“女のエグみ”と“生臭さ”読者層の新陳代謝を促す「STORY」に、「お小遣い月1万円」層が登場家族愛だけでは解決できない、「STORY」が直面する介護の理想と現実 次の記事 熊切あさ美の過去の男事情 >