コラム
ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第9回

憧れの婆さんNO.1! 純白ドレスのヘレン姐さんが『RED』で大活躍

2011/01/28 21:00
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 サイ女な皆さん、今日も韓国芸能界の裏事情が気になって仕方ありませんか~。アタシも、新宿2丁目「KARAKARA」のニコル担当(誰がC・W・ニコルや!)ですから、日本のシングルがたった2枚で打ち止めじゃ、商売あがったりなのよね。って二倍以上の年齢のオッサンが、KARAの真似して商売言うなってか。


 でもね、世の中にはイイ年こいてまだまだ元気なジジババがいっぱいなんだ、って思い知ってほしいのよ。ちなみにアタシは中間のオジバ……。今回ご紹介する映画は、一見、オカマ女子やオカマの琴線には引っかからなさそうなんだけど、実はどうしてなかなか、おキャンプなセンスも十分あった拾い物。アクション大作『RED/レッド』よ~!

パッと見、熱い野郎たちのアクション映画な宣伝ビジュアル。でもよく見て!
もう戦わせちゃいけないおばあちゃまが紛れ込んでるよ!

 正直言っちゃうと、サイ女編集の薄幸気味なN(というかサイ女編集はみんな薄幸気味)との打ち合わせの時点で「今月はオカマ心をくすぐるロードショーがないわね~」と言っていたのよ。『RED/レッド』も主演は、なぜかこの連載の記念すべき1回目と同じブルース兄貴だし。でも一応、前情報として知っていたヘレン・ミレン姐さん……というか正しくは婆さんのマシンガン乱射シーンがどうしても気になってチャレンジしてみることにしたわ。

 ヘレン・ミレン姐さんといえば、エリザベス女王役の『クィーン』で、アカデミー主演女優賞も獲ってる超ベテラン女優(65歳)。でも、アタシにとっては、ホラー映画『スクリーム』シリーズで有名なゲイ脚本家ケヴィンちゃんの初監督作品『鬼教師ミセス・ティングル』でこそ、主演女優賞をあげたい姐さんです。まあ本人からしたら、浜崎あゆみさん出演の映画『麗霆゛子!! レディース総長最後の日』並の黒歴史なのかもしれませんが、あの、ケイティ・ホームズにボウガンを向ける女教師姿の怖いことといったら。今作では、そんな勇ましい彼女が再び見られるんですよ。ほれ!

もうね。このビジュアルのためだけに映画を観てもいいと思うの。
どうよこの純白のドレスに身を包みつつ、ふてぶてしい表情で狙いを定める65歳。

 てゆうかヘレンさん、登場した時からずっと思ってたんですけど、うちのミセ(新宿2丁目ゲイミックスバー)によく来る、女装のオジサンにそっくりなのよね! 赤ちゃんと老人は男女の区別がつきにくいわけですけど、ヘレンさんも、女性ホルモンの分泌はナケナシかと思われます。でもだからこそ、女装という行為に輝きが増すの!(あくまで女装扱い)主演女優でオスカーを手にした後、ドレスアップしてマシンガンをぶっ放す65歳、なんて、オカマ女のはるか憧れの地にヘレン姐さんは到達してるんだわ。ホント、かっこいい。

 このビジュアル以外にも、旧ソ連のスパイ役イヴァン・シモノフ兄貴(超イケ親父)とのロマンス描写もベタつかず、でも十分に愛情の深さが伝わってきてたまんないの。ヘレンの活躍部分はざっと15分程度だと思うけど、その(ほとんど動かない)アクションと、女っ気たっぷりの恋の会話は、若手アホ女優のラブコメ1本分くらいの価値は余裕であるから安心して!

ヘレン姐さん以外は観るべきところが無いのかっていうと、これも、いい意味で
予想を裏切られたおもしろさ!

 まず、トウがたってるヒロイン役のメアリー=ルイーズ・パーカー。この人、知らないしパッとしない見た目だし……と思われそうだけど、海外ドラマシリーズ『Weeds~ママの秘密』のマリファナ売人主婦役で、これまたゴールデン・グローブ主演女優賞を獲ってる実力派。このドラマでも楽しませてくれた、ひょうひょうとしたおトボけな演技で、「現実離れしたスパイの危ない世界に巻き込まれる一般人」という、観客に近いポジションの役をうまくこなしてくれてます。

 あと、ヘレン姐さんの横で武器サポートをしているのは、名優ジョン・マルコヴィッチ。あいかわらず、いい具合に狂った演技で、この映画のテーマでもある「危険なジジババたち」としてはまさに筆頭キャラ。

 そうなのよ、冒頭でも言ったけどこの映画は「イイ年こいて、まだまだやっちゃうよ!」というテーマ。これは本当にすばらしい。ただ、だからって本当のご老人のみをお客様にしちゃうのはちょっと厳しいので、演出やノリについては十分すぎるほど若いの。ギャグや場面展開のポップさなんか、単館系スカしアクション映画かと思うくらい、気が利いてるし。

 アタシ目線じゃヘレン姐さんが象徴的ではあるけど、マルコヴィッチもブル~スも、前述のイヴァンも、親父たちだってみんなすこぶるキュート。全員まとめてお相手してもいいくらい、シワシワなのに魅力的なんだから。ジジババが、カラフルで若々しい演出に何の違和感もなく溶け込んでるって、すばらしいことじゃない。

 ただ、今みたいな宣伝ビジュアルじゃ、そういう映画だって気づいてもらえなさそうなのが心配ねー。スティーブン・セガール作品みたいな本気でオッサンくさい(だけの)暑苦しいアクション映画っぽいんだもん。

 違うの~。軽快で笑えて、でも意義もあるアクション大作なんだってば。ちょっと、もったいない! いつもラブコメ系映画に付き合ってくれる、本当はアクション好きなオトコとかと見るのには絶対オススメな作品。彼の欲求も満たしつつ、アナタもヘレンとメアリー中心に、十分楽しめるはずよ! みんなでヘレン大姐様を目指しましょ。65歳になってもドレスアップして男どもをギャフンと言わせましょ~!

ブルボンヌ
女装パフォマー/ライター。『この映画がすごい!』(宝島社)『BUBKA』(コアマガジン)等に寄稿しつつ、フジテレビ『知りたがり!』コメンテーター出演や、新宿2丁目ゲイミックスバーのママ業もこなす。芸能通のゲイたちと一緒にオカマなブログ『Campy!』もプロデュース中。

『RED/レッド』
郊外で暮らすフランク(ブルース・ウィリス)は、かつて腕利きのCIAエージェントだったが、ある日武装集団に襲われた。市役所のOLサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)を連れ出し、元上司のジョー(モーガン・フリーマン)や、元MI6諜報部員のヴィクトリア(ヘレン・ミレン)らかつて仲間たちと伝説のチームを再結成し、真相を探っていく。
監督/ロベルト・シュヴェンケ
脚本/ジョン・ホーバー&エリック・ホーバー
キャスト/ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレンほか
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2011年1月29日(土)全国ロードショー(丸の内ピカデリー他)
公式サイト

【バックナンバー】
・第一回 ブルース・ウィルス『サロゲート』
・第二回 メリル・ストリープ『恋するベーカリー』
・第三回 ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマンなど『NINE』
・第四回 ガボレイ・シディベ『プレシャス』
・第五回 『セックス・アンド・ザ・シティ2 』
・第六回 アンジェリーナ・ジョリー『ソルト』
・第七回 大竹しのぶ『オカンの嫁入り』
・第八回 クリスティーナ・アギレラ&シェール『バーレスク』

最終更新:2019/05/17 21:06
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