ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第8回

アギレラ&シェールでオネエ歓喜! 『バーレスク』でオネエ感性磨いちゃお♪

2010/12/17 22:00
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 サイ女な皆さん、今日も乾燥肌に油塗りこんでますか~。関係ないけど、ひび・あかぎれケアのお薬のCMってどうしてあんなにエグいのかしらね。毎回『SAW』の新作かと思うわ。血まみれにしか見えない手とか、真っ赤な関節の割れ目ちゃん見せつけて「パックリ~」とか言ったりして、どんだけエログロなのよ!


 さて、割とまったりペースで「気になる映画があれば書いてやろう」風に見えなくもないこの連載ですが、今回ももろオネエシーン直撃の映画が来ちゃったわよ~。というか、オネエ以外は誰が反応するのか心配なくらい。だって、クリスティーナ・アギレラ&シェールのW主演で送るキャバレーミュージカルよ!? その名も『バーレスク』!

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ドーン! アギレラ姫にひれ伏す下女の皆さんと、
赤塚不二夫ポーズではしゃぐ男たち

 セレブ好きのオネエにしてみたら、アギレラ&シェールなんて、もうツボもいいとこなんだけど、一般的にはどうなんだろ? とも思うので、この二人についておさらいしときましょ!


 まず、アギちゃんだけど、名前とエロさからも分かる通り、阿木燿子先生の隠し子なんですね。って人種が違うわ! あ、でも日本との縁はとっても深くて、米軍にいたパパの都合で3歳から3年くらい日本に住んでいたり、全米デビューの前に、実は中西圭三兄貴とのコラボで初シングルを出していたりするの。ブリちゃんやジャスティン(・ティンバーレイク)と同じ若手スターの登竜門『ミッキーマウスクラブ』出身ってのも生粋のアイドルらしくてイイわよね。

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華奢なブロンドで歌も踊りも完璧、さらに性格まで良い努
力家のトップアイドル。水嶋ヒロくん並に二物も三物も与
えられて、ついでに馬ヅラも与えられちゃったのね......。
でも大丈夫、サラ=ジェシカ姐さんのほうが重度よ!

 実際、最初のアルバムまではブリちゃんと双璧をなす正統派アイドルとして大人気だったんだけど、オネエの琴線に触れたのは映画『ムーラン・ルージュ』の主題歌『レディ・マーマレイド』に参加してから。それまで、歌唱力はあるけど馬ヅラぎみな娘さんくらいにしか思ってなかったアギちゃんが、突然京劇ばりの真っ赤なアイメイクに連獅子ヘアと下着姿で絶叫してくれたもんだから、「やだ、この娘イイコじゃない!」ってなったわけ(オネエの価値観って……)。

 そこでオカマ女子に目覚めちゃったアギちゃんは、次のアルバム、タイトルからして『ストリップト』で、糞尿まみれみたいな地下女ファイターになったり、「オカマも女装も美しいわよ!」なんてメッセージの歌を歌ってくれて、すっかりオネエ様たちの姫になったのよね。


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ゲイバーでよく見かける、ヒゲ坊主兄貴のイカホモと、その友達の年増
ドラァグ・クイーンの図。......ん?

 そしてもう一人のシェールさん。この方は顔を見れば分かる通り、女装の大先輩です、ハイ。ってアタシもガチで子供の頃はそう思い込んでたくらいのオカマ顔ですけど 、一応アカデミー主演女優賞に輝いたり、50歳過ぎにして『Believe』ってダンスナンバーでグラミー賞も獲ってるすごい姐さん(生物学的にも女性)なんです。

 そんなオネエ心をくすぐる二人が、毎夜セクシーダンスショーを繰り広げるバーレスクを舞台に見せるミュージカルってんだから、こりゃもう期待せざるを得ないでしょう? 『ショーガール』や『キャバレー』の興奮が再び! かしらって。

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幼すぎるAKB48じゃ物足りない層が、K-POPの美脚ガールズに流れる中、
さらに上級者はプンプン匂ってきそうなキャバレーショーガールまで
いっちゃえ! ついでに女装ショーも見に来な!

 ……結論から言うと、正直そのへんの名作が持つエグみは無かったのよね。舞台設定と女優陣は完璧なんだけど、ストーリーの運びが70年代の少女マンガかと思うくらいに、コッテコテなの。夢を抱いて田舎を旅立つ一文無しの少女。舞台の世界に魅せられ、下働きからある日実力を認められスターに……っていう、大筋のベタさもさることながら、シェール姐さんはビジュアル的にもまさしく月影先生ポジション。いつもケンカばかりの、でも等身大でいられる男と、ヒロインに近付く野心家のエリート男のどっちを選ぶの!? ってロマンスの構図も分かり易すぎてむしろ新鮮なくらい。
 
 オネエさんって、アタシを含めてひねた見方をしたがるインテリぶった人が多いから、この王道っぷりは失笑の対象になっちゃうかもねー。でも失笑でも笑いは笑い。多分この映画は、アメリカの片田舎のショッピングモールでたむろする、純粋だけどちょっと残念な娘さんたちにも分かりやすい夢を与えてあげようってな、初級のオネエレッスンなんだと思うわけ。ベテランのオネエさんにとっては「今さらレッスン1って何よ。こっちはもうガバガバなんだよ!」って苛立つ面もあるかもしれないけど、アタシは割り切っちゃって、かなり楽しめたわ。だって、十分なクオリティの歌と踊り、そしてビッチ女&エロ男たちで画面が溢れてんのよ?

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当作品の二大セクシーメンズ。左の人は男装の麗人・ターキーみたいに
見えますが、お店以外ではこんなメイクをしないでエロいボディをたっ
ぷり見せてくれます。右の兄貴はいわゆる悪役サイドですけど、個人的
にはホントやられたわ! お願い、やらせて!

 子持ちで旦那と別れてド派手なビジュアルのPVをさんざん見せてきた、もうとっくの昔に脱アイドルを果たしたはずのアギちゃんが、なんで今さらこんなにアイドル枠なのかは正直どうかと思うけど、あのコブシの聴いた歌声は健在。ちゃんと少女マンガのお約束、意地悪な先輩ライバルも出てきて、それなりにはビッチなやり取りも見せてくれるし。ちなみにビジュアルが微妙に星野真里風。意地悪キャラって万国共通のラインなのね……。

 そして忘れちゃいけないシェール大姐サマ。ぎりぎりで自分の見せ場が少ないってゴネて押し込んだなんて話があるのもさすが! オープニングのハイレグ姿に、「あたしゃまだ負けへんでぇ」的な渾身のバラードと、二つの違うババアパワーをしっかり見せつけてくれて満足満足。

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凝ったストーリーラインなんて期待しないで、こういう犬神家の一族ダ
ンスみたいなビジュアルを楽しんで!

 てなわけでアタシは話の失笑っぷりも含めて、試写室で一人でニヤニヤしながら楽しめたわ! 話が重かった『NINE』とかにくらべたら、パーティームービーとしてはむしろ分かりやすくて良いんじゃない?

 ついでに、映画公式サイトのアギレラ口パクムービー企画がかなりウケるの。世界じゅうのお姉さんとオネエさんがアギちゃんになりきってるムービーが見られるし、なんとアナタも参加できるという優れもの。今度アタシも女装でやっちゃおうかしら……。

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ブルボンヌ
女装パフォマー/ライター。『この映画がすごい!』(宝島社)『BUBKA』(コアマガジン)等に寄稿しつつ、フジテレビ『知りたがり!』コメンテーター出演や、新宿2丁目ゲイミックスバーのママ業もこなす。芸能通のゲイたちと一緒にオカマなブログ『Campy!』もプロデュース中。

・『バーレスク』
ロサンゼルスにあるラウンジ「バーレスク」を経営するテス(シェール)は、かつて有名なダンサーだったが、今は引退し後進の指導に当たっていた。田舎町から出てきた若い女性アリ(アギレラ)は、ウェイトレスとしてラウンジで働いていたが、ステージで歌声を披露すると、テスに認められその才能を開花させていく。

出演/シェール、クリスティーナ・アギレラ、エリック・デイン、カム・ジガンデイほか
監督・脚本/スティーブ・アンティン
配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
12月18日(土)より全国ロードショーにて公開
公式サイト

【バックナンバー】
・第一回 ブルース・ウィルス『サロゲート』
・第二回 メリル・ストリープ『恋するベーカリー』
・第三回 ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマンなど『NINE』
・第四回 ガボレイ・シディベ『プレシャス』
・第五回 『セックス・アンド・ザ・シティ2 』
・第六回 アンジェリーナ・ジョリー『ソルト』
・第七回 大竹しのぶ『オカンの嫁入り』

最終更新:2019/05/17 21:06