サイゾーウーマンコラム貧乏でも巨デブでもアホでも根性があれば! 『プレシャス』で立ち上がれ コラム ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第四回 貧乏でも巨デブでもアホでも根性があれば! 『プレシャス』で立ち上がれ 2010/04/24 17:00 マライア・キャリーブルボンヌブルボンヌの映画批評「女優女優女優!」ガボレイ・シディベレニー・クラヴィッツ 『サイゾーウーマン』読者の皆さん、今日も妄想こいてますか~。新宿2丁目ママのブルボンヌが、またまた濃~い映画を見てきちゃいました。 その名も『プレシャス』! 高価で美しい宝物……。主役のNYに住む16歳の少女の名前が、そのままタイトルになってるのね。さー、どんなセレブな娘さんのお話かしら。それ、ドーン! そうです、アタシがプレシャスです。ドスコ~イ!(c) PUSH PICTURES, LLC ヒーッ! 超重量級! 顔もふてぶてしいことこの上ない。しかもNYったって悪名高いハーレム地区。で、ぶっちゃけ読み書きもできない娘さんでした。 て……てめーどのツラ下げてプレシャス名乗ってんだッ!(アタシひどい) でもね、実はホントつらい境遇の娘さんなのよ。なんと父親からレイプされて、12歳の時に障害のある子供を産んでいるの。そしてその鬼父がトンズラしている今、また二人目を妊娠中……。プレシャスちゃんと同じく重量級の、見るからに強そうな母親メアリーも、かばってくれるどころか、毎日のように虐待を続ける鬼母という生き地獄。 プレシャスてめ~、アタシの男を奪いやがってこのクソ娘! (という凶暴な演技で見事、オスカー助演女優賞をゲット!) もうね、日本のギャルをさんざん泣かせてきた歴代邦画の難病女子高生さんたちが束になってもかなわない、不幸のてんこ盛り娘さんなのよ。 そんな暗い映画見たくないってか? ところがドスコイ、意外なほどサバサバしてて重くないのよね。ぶっちゃけ、プレシャスちゃんの顔のドアップを観るたび、はかない悲壮感よりも、みなぎる生命力ばかりを感じちゃうってのもあるんだけど、お話の見せ方もとても前向き。 つらいシーンで暗くなる寸前に、プレシャスの妄想ワールドが発動して、いちいち笑わせてくれちゃうしね。PV撮影で踊りまくるドヤ顔プレシャス! とか、レッドカーペットでフラッシュを浴びまくるご満悦プレシャス! とか、ツッコミ用の映像を挟んでくれるおかげで、妙に風通しがいいのよ。 そして、彼女がフリー・スクールの門を叩いたことから、世界は変わっていくの。状況は違えど、さまざまな問題を抱えたクラスメートたち。さらに、初めて心底自分を心配し支えようとしてくれる先生に出会ったことで、プレシャスはおバカなりに、いろんなことを考え始めるのね。 先生があんたを幸せにしてあげる! ちなみに先生レズビアンだけど、デブ専じゃないから安心してね! ほかにも、ものすごい豪華な助っ人が二名。プレシャスが二人目の子供を出産しちゃう時には、男性ナースが優しくサポートしてくれるんだけど、その人はあの、レニー・クラヴィッツ。なんか久しぶりに見たらすごくイケてたわ~。アタシの赤ちゃんもレニクラに取り上げてほしい……。 そしてもう一人、ソーシャルワーカー役にまさかのマライア・キャリー! しょぼーん……。って、アタシ世界の歌姫だよー! 気づいてー! 見事なほど、もっさりした地味オバはんになっちゃってるので、マライアなんだって思って見ないと、誰もがスルーしそうなスゴさ。ご本人は捨て身の演技として絶賛を浴びるおつもりだったんでしょうが、巷では「マライアのノーメイク、しょぼすぎてウケる!」という方向に話題が沸騰してしまったのね。慌てて「あれはノーメイク風に見えるすごいメイクなのよ!」というワケのわからない言い訳をしたマライアさん、やっぱりウケる! とまあ、新しい世界で出会った人たちに助けられて、プレシャスちゃんは、「幸せでない自分」から「幸せに向かう自分」に変わっていくのです。 でも実は、さらなる不幸も待ち受けているのよ。さっき挙げただけでも十分すぎるのに、これ以上ってホント、どんだけ~!(オネエキャラとして、一度は言っておきたかった)これでもかってくらいに続く不幸。それでも何度でも立ち上がる、健気なプレシャス。ある意味、NYハーレム版おしん、かしら……。 負けるなプレシャス! 貧乏だって、巨デブだって、アホだって、子持ちだって、いじめられてたって、根性さえあれば幸せになれるわ! 年増だって、彼氏ナシだって、女装だって、幸せになれるわ!(こっそりプレシャスからブルボンヌへスライド) 皆さんもこの映画を見て、自分が普段思ってる不幸とか悩みなんて、ガボちゃん(プレシャス役の女優)のソレに比べたら鼻毛みたいなものだって思い知ってね。そして、どんな場所からでも、腐らず歩き出すことが、プレシャスな人生の始まり! 前を向いてる人には、仲間や導く人たちが自然と現れるものってことよね。ノーメイクのマライアもきっと来るわよ。 そういや、アタシの知り合いのデブ専のホモが「ガボちゃん、超イケる……」って言ってたし。意外なところに幸せの受け皿ってあるんだわ~! (ブルボンヌ) ブルボンヌ 全国クラブのお笑いショウや試写会テキトーMCで活躍中の女装パフォマー/ライター。『この映画がすごい!』(宝島社)『BUBKA』(コアマガジン)等に寄稿しつつ、新宿2丁目ゲイミックスバーのママ業もこなす。芸能通のゲイたちと一緒にオカマなブログ『Campy!』もプロデュース中。 ・『プレシャス』 1987年のハーレム。肉体にコンプレックスを持ち、家庭では虐待を受け、文字の読み書きもままならない16歳の少女、クレアリース”プレシャス”ジョーンズ。父親の虐待で16歳にして2人目の子どもを妊娠し、母親からも言葉と暴力の虐待を受け続ける毎日の中、フリースクールに通い始めたことをきっかけに、一歩を踏み出そうする。 監督・製作/リー・ダニエルズ 出演/ガボレイ・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツ 4月24日(土)よりTOHOシネマズシャンテ、シネマライズ他全国公開 公式サイト 【バックナンバー】 ・第一回ブルース・ウィルス『サロゲート』 ・第二回メリル・ストリープ『恋するベーカリー』 ・第三回ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマンなど『NINE』 最終更新:2019/05/17 21:07 次の記事 男は「うつ伏せ後背位」が好き! 思い切りがいい「GINGER」の「SEX特集」 >