サイゾーウーマン海外見ていてじれったい! 王道ラブストーリーの『グレイズ・アナトミー』 海外 [連載]海外ドラマの向こうガワ 見ていてじれったい! 王道ラブストーリーの『グレイズ・アナトミー』 2009/06/30 20:00 海外ドラマの向こうガワT・R・ナイトエレン・ポンピオパトリック・デンプシー 『グレイズ・アナトミー シーズン1』コンパクトBOX/ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント ――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す! 1960年代に放送された『ベン・ケーシー』を筆頭に、『外科医ギャノン』『St.Elsewhere』『ER 緊急救命室』『シカゴホープ』など様々な医療ドラマが放送されてきたアメリカ。その中で2005年に放送開始された『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』は「常に患者目線」なドラマとして、視聴者から熱狂的な支持を得た。 ドラマがヒットした背景には、「お金持ち以外は満足な治療が受けられない」というアメリカが抱える医療制度問題が色濃く影響している。 アメリカでは医療保障においても個人主義であり、日本のように国民全員が加入できる公的医療保険制度はない。個人で、もしくは勤務先を通して民間医療保険に加入するか、または保険に入らず完全自己負担で医者にかかることになる。 高齢者向けの”メディケア”や低所得者向けの”メディケイド”という公的医療保険もあるが、医師が受け取る報酬が少ないため病院で治療拒否されたり、治療を後回しにされるなど、ぞんざいな扱いを受けることが多い。 90年代に放送された『ER 緊急救命室』では、医者が保険会社と電話で口論するシーンや、高額なため患者が治療を拒否するシーンなどがリアルに描かれ、多くの国民が共感。ドラマは大ヒットしたものの、あまりにもグロい映像と惨事の連発に「お腹いっぱい」となり次第に視聴者は離れていった。 そんな中で放送が開始された『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』は、理不尽な医療制度に怒りを感じながらも抜け道を探し、患者へベストな治療を提供しようと奮闘する「常に患者目線」なインターンの姿が描かれており、ドラマはたちまち大ヒット。 理想の医師像を追い求めるストーリーに「こんなインターンがいる病院で治療を受けたい」と視聴者はエールをおくった。 ■”ドラマチックだけれど、共感しまくり”がポイント また、単なる医療ドラマにとどまらず、もどかしいラブストーリーも複数織り込んでいるのも特徴。相手の心をつなぎとめようと惨めなまでに必死な姿をさらけ出し、友人同士でもぶつかりあいを繰り返すなど、「理想の医療を追及」する割に恋愛面ではみな不器用なのだ。 例えば、有能な脳神経外科医デレク・シェパード(パトリック・デンプシー)との恋愛に身を焦がすメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)は、思い込みが激しく不安だらけになってしまい「あともう少しなのにうまくいかない」状況を繰り返すし、ジョージ・オマリー(T・R・ナイト)の恋愛遍歴も、見ていてじれったくなってしまう。しかし、これこそが『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』の最大の魅力なのだと評価する視聴者も多い。 シーズン1~3は、「どうしてもうまくいかない」母娘関係や、親の介護というリアルな問題が登場し、仕事を持つシングル女性にとって「ドラマチックすぎるけど、共感しまくれる」ポイントがてんこ盛りとなっている。 そして、日本でも今月25日にDVDがリリースされたシーズン4では、主人公たちは試験をパスしてレジデントへと昇進。患者の家族に対する配慮も忘れず、最適な治療を提供する「理想の医師へと一歩一歩近づいていく」姿、そして責任あるポジションを与えられ、それに答えようと必死に奮闘する姿も描かれている。 メロドラマにも近いドラマチックなストーリー展開の中で、さりげなくアメリカ医療制度にメスを入れるスタイルを確立した製作総指揮者のションダ・ライムズは、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれるなど高評価を獲得。『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』放送開始2年にしてスピンオフ『プライベート・プラクティス』が放送されるようになった。 アメリカ人のキャリア、恋愛、シングルライフ、そして医療問題が見えてくる『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』。日本の女性が共感できる部分も多く、勇気づけられるエピソードも多いだろう。悩み多き女性のガイディング・ライトとして、ぜひ見てもらいたい作品である。 堀川 樹里(ほりかわ・じゅり) 6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。 『プライベート・プラクティス:LA診療所 シーズン1 』DVD COMPLETE BOX “個人授業”ってなんかエロい…… 【関連記事】 サラ・コナーが21世紀の”強い女性”を体現した、TV版『ターミネーター』 【関連記事】 最終話が衝撃的!? ”母親不在”を乗り越えた『フルハウス』の魅力とは 【関連記事】 “婚カツ”女子は必見、主婦の”奥行き”を描く「デスパレートな妻たち」 最終更新:2010/01/28 22:56 次の記事 マイケルよりも小倉! 追悼特番で見えてきたフジテレビの価値観 >