サイゾーウーマン海外サラ・コナーが21世紀の”強い女性”を体現した、TV版『ターミネーター』 海外 [連載]海外ドラマの向こうガワ サラ・コナーが21世紀の”強い女性”を体現した、TV版『ターミネーター』 2009/06/12 11:45 海外ドラマの向こうガワサマー・グロートーマス・デッカーレナ・へディ 『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ〈ファースト・シーズン〉 コレクターズ・ボックス』/ワーナー・ホーム・ビデオ ――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す! 9.11同時多発テロ以来、アメリカ国民の意識は大きく変化した。世界中どこにも安全な場所はないという不安、敵はすぐそこに居るという恐怖心。それらに打ち勝つためには、これまで以上に強い「愛国心」を持たねばならない。人々はそう思うようになりアメリカ国旗を庭先に掲げ、「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌い「愛国心」に依存するようになっていった。終わりの見えないテロとの戦争へと突入した後も「愛国心」がアメリカ国民の士気を鼓舞し続けている。 しかし、第一線で戦う兵士たちにとって「愛国心」は単なるキャッチフレーズにしか過ぎず、精神的に支えているのは「生への執着」と「自由への切符」だとされている。彼らが戦地で心のよりどころとしているのは「家族愛」と「明るい未来」なのである。 家族愛を形成する「家族の絆」をしっかりと繋いでいる母親たちは、これまで兵士として戦う子供たちの無事を、遠く離れた故郷で胸が張り裂けそうな思いで祈ることしかできなかった。しかし今回の戦争では、かつてないほど多くの母親兵士が戦地に派遣されており、幼い子供たちが故郷で母親の無事を祈るという逆転現象が起こっている。 そう、21世紀は母親が兵士となり「子供たちの未来のために」第一線で戦う時代なのである。 壮大なスケールで行われた大統領選挙の真っ只中の2008年1月。ハリウッド映画史上最強の女性キャラクター、『ターミネーター』シリーズのサラ・コナーを主人公としたテレビ・ドラマ『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』がスタートした。 映画『ターミネーター2』で将来人類を滅ぼす人工知能スカイネットに繋がるチップを破壊したサラは、チップ開発者ダイソン殺害の容疑をかけられ、息子ジョンと逃亡生活を送っていた。今まで以上に自分を犠牲にしながらジョンを守り、未来に何が起こっても大丈夫なようにと備えながら。 そんな2人の前に、ジョン抹殺の指令を受けたターミネーターT-888、そしてジョンを守る指令を受けた女子高生型ターミネーターが突然現れる。『ターミネーター2』で「審判の日」を阻止したはずだったが、実際は遅らせただけで、2011年4月21日に最終核戦争は起こるのだと知りサラはがく然とする。しかし、まだ高校生の未熟なジョンを守れるのは自分だけだと己を奮い立たせ、再びターミネーターと戦う決心する。 米国脚本家協会のストライキと重なり、シーズン1は大幅にエピソード数が縮小されたが、どこに潜んでいるか分からない「不気味な敵と戦う」という設定、終わりなき戦い、敵に体当たりで挑む「女兵士」サラの姿に多くの視聴者が共感。時代に味方されたドラマは高視聴率をマークした。 遠い昔から、母親たちは「子供が一人前の大人に成長すること」「子供に豊かで平和な未来を与えること」を願い子育てをしてきた。『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』でサラを演じているレナ・へディはマッチョではなく、スレンダーな女性だが、物語の原点ともいえる「静かな母性愛、女性が持つ芯の強さと繊細さ」が表現できていると高く評価されている。 また、人類の救世主になるという運命を背負い、苦悩しながら精神的修行を積むジョンを演じているトーマス・デッカーも、現代の男性を代表するような「ちょっと頼りない」母性本能をくすぐる雰囲気を持つ若手俳優であり、「これまでにない知能や機能を持つ」女子高生型ターミネーターを演じるサマー・グロー共々、当たり役だとドラマの人気を支えている。 先日、日本でも『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』シーズン2のDVDがリリースされたが、ジョンの精神に大きな影響を与えるストーリー展開となっており、6月13日に一般公開となる最新映画『ターミネーター4』につながる作品となっている。ドラマと映画をあわせて観ると、『ターミネーター』がいかにしてSFアクションの域を超え、深みのある作品へと進化したか分かり面白さが増すだろう。 草食系男子化が進んでいるといわれている日本人男性。その背景の一つに「日本人女性が強くなったこと」が挙げられており、自我の強い女性が増えたことばかりが強調されている。しかし、肉食系女子のコアな部分にはサラ同様、男性が求める優しさと強さ、そして溢れる母性愛が詰まっているのではないだろうか。 時代は戦う女性を求めている。決して守りになど入らない、サラのような女性を。 堀川 樹里(ほりかわ・じゅり) 6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。 【関連記事】 最終話が衝撃的!? ”母親不在”を乗り越えた『フルハウス』の魅力とは 【関連記事】 “婚カツ”女子は必見、主婦の”奥行き”を描く「デスパレートな妻たち」 【関連記事】 名実ともにハリウッドスター、ジョシュ・ハートネットの”レベル”とは? 最終更新:2010/02/01 16:39 次の記事 麻薬使用のチュ・ジフン、残された道は入隊のみ!? >