[TVツッコミ道場]

マイケルよりも小倉! 追悼特番で見えてきたフジテレビの価値観

2009/07/01 08:00
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そんな小倉さんもみのもんたのごとくレギュラー
を降板する日がくるのだろうか

 ”マイケル・ジャクソン死去”。世界中がこのニュースの衝撃に包まれた6月26日(日本時間)。「呼吸停止」の段階から、各局のニュース番組・ワイドショーは、朝早くからひっきりなしにこの話題をとりあげていた。

 そんななか、フジテレビはその日の午後7時から番組を変更し、2時間の追悼特番を放送した。タイトルは、以下の通り。

『緊急特別番組 マイケル・ジャクソンはなぜ死んだのか?』

 この段階では、他局は追悼番組をやる気配はない。フジテレビの編成、判断スピードは早いなぁと感心しつつ、チャンネルを合わせてみたところ、冒頭数秒でその感心気分は、あっという間に半分以下になってしまった。

「……今日、一人のスーパースターが、この世を去りました……」

 いくぶん神妙な面持ちでスポットライトを浴びて、そう語り始めたのは小倉智昭だった。


 小倉の隣にいるのが中野美奈子。そして、笠井信輔にデーブ・スペクター。……完全に同局の『とくダネ!』である。そこに、同番組コメンテーターで「(マイケルの)全盛期はリアルタイムで知らないんですけど」と語る眞鍋かをりと、唯一『とくダネ!』枠ではなく、日曜日の夜の情報番組『サキヨミLIVE』から、「僕が知ってるマイケル・ジャクソンは、スキャンダルが先行しているイメージ」というウエンツ瑛士。

 顔ぶれ紹介の段階で、内容を見なくともだいたいの空気が分かる特番だ。オリンピック中継で、「僕はその瞬間を生で見たわけなんですけどね」としょっちゅう言ってる小倉が、師匠筋の大橋巨泉ゆずりの「オレ自慢」なトークを披露。笠井と中野が「さすが小倉さん!」とメーンのゲストやテーマよりも小倉礼賛を優先させる。

 実際あまり知識もなく、マイケルに全然思い入れなさそうな眞鍋とウエンツを呼んでいることからも、主眼はマイケルにないことが分かる。眞鍋は「スリラー」を聴いたことがないみたいで、「PVは13分と長いけど、音源は短いのか」という質問をしてたぐらい。まあ、いつもの『とくダネ!』と言えば、それまでなのだが。他の人選はなかったのだろうか、フジテレビ。

 だいたい分かると言いつつ、結局番組を見てみた。案の定、小倉は80年代に来日した際のステージを見たということを、「4回、生の舞台、見てるんで」と、得意気に語っていた。しかし、「実際に見てないでしょ?」「ウエンツも見てないよね?」と強調するが、たいして好きでもないだろう面々に自慢したところで、相手も「すごいですね」としか、返せないだろう。

 中野アナが「スリラー」のPVを「見たことありません」と言うと、「ないでしょ!」と、嬉しそうな小倉さん。このとき中野アナはなんだか無表情、詮索することでもないが、見たことありそうだ。


 そんな「生で4回見てる」マイケルではあるが、「スリラー」のPVに対し絶賛しながらも、「僕はもう、ホンットに数えられないほど、これ見ましたけど……27年ぶりに見ても、名作なんですよね」と、ハテナなコメント。えっと、当時は数え切れないほど見たけど、飽きちゃって27年経っちゃったということでしょうか。ホントに好きなのか?

 しかも、「僕は、『とくダネ!』で何回もマイケル・ジャクソンのことを取り上げたとき、常に擁護してきたつもりなんだけど」と発言。立ち位置はどこだ。

 基本的には番組のつくりは、現地の反響を中継で伝えたり、足跡をたどったりと、ワイドショー特番らしいつくりなのだが、小倉を囲む空気以外にも、「?」という箇所がいくつもあった。

 マイケルの訃報に際し、コメントをもらうなら、誰にもらうだろうか。まあ、いろいろあるのだろうが、芸能界で、「影響を受けた方、かなりいるでしょう?」(小倉)ということで、VTRコメントで登場したのがモト冬樹とブラザー・トム、そしてブラザー・コーン。一応ミュージシャンだけどバラエティー寄りな上、マイケルとイメージが直結しづらい微妙な顔ぶれ。これも、「おともだち人選」だったんでしょうか。まあ、急な話だからな。

 さらに、「おとといデビュー」して「マイケルに影響を受けた」という、「BIGBANG」(韓国の男性グループ)のSOLという人にマイケルを語られても、そもそも誰なんだ、お前は? と思う人多数なはずだ。

 そのVTRのあとに、一応マイケル寄りのイメージが強い東山紀之の文章コメントを紹介していたが、そのつなぎがよくない。

 「さらに、ジャニーズ事務所といいますと」と、29日放送の『SMAP×SMAP』を、マイケルが出演したときのものを「追悼SP」として放送することに決まったという番宣をくっつけてしまった。なんか、一層気の毒だな、マイケル・ジャクソン。

 デーブ・スペクターが、「こういったスーパースターは、得てして死後のほうが大きいビジネスになる」と最後に言っていたが、亡くなった日から、その「ビジネス」は始まってるんだなと、そんな気がした。

 2時間通して気付いたこと。自分の思い出を若干熱めに織り交ぜつつ語る、笠井がたぶん一番マイケル好き(でも、出しゃばれない)。それから、デーブがダジャレを一切言わなかった。以上。
(太田サトル)

『男おばさん的映画道楽 』

おばさんよりも、おばさんらしい”性根”

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最終更新:2010/01/04 19:33