佐々木俊尚氏×白河桃子氏対談(後編)

独身でも子持ちでも生きやすい社会とは? 佐々木俊尚×白河桃子が語る、「変わりゆく暮らし」の選択肢

2017/04/01 15:00
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佐々木俊尚氏(左)と白河桃子氏

(前編はこちら)

 論客としても著名なジャーナリストの佐々木俊尚氏と白河桃子氏。現代日本の家族観やライフスタイルをテーマにした書籍を多数手掛ける両氏に聞く、「これからの時代の女性の生き方」。後編では、変わりゆく家族の枠組み、そして生き方の選択肢について語っていただいた。

■シェアハウスは、これからの暮らしの有力な選択肢

――夫婦は唯一無二の味方として、お互い助け合いながら生きていますよね。結婚という枠組みを取っ払って、そうした持続的な関係性を求められる相手というのは見つけられるものでしょうか?

佐々木俊尚氏(以下、佐々木) よく「夫婦は鉄の扉の中で2人きり過ごしていて、外に出ると7人の敵がいる」といわれますが、家の外に出ると全部が敵っていう考えはおかしい。仲間だっているんですよ。さらに言えば、家の中に自分の言うことをなんでも聞いてくれる夫がいるという幻想を持っている人がやたら多いですけど、それは違うと思うんですよね。夫婦ともに相手をコントロールできる人間と考えるのは間違っています。家でも外でも対等な関係性を築くことが、望ましいのではないでしょうか。


白河桃子氏(以下、白河) 面白いのが、アメリカなどの激しい競争社会だと、やはり家族が一番になるんですよね。かつて日本は、企業コミュニティがしっかりあって、そこに所属していれば良かったんです。お給料がもらえて、一生安泰だった。ところが、そこが段々崩壊し、さらには核家族とあって不安定です。いまの若手で、会社に一生所属して生きられると考えている人はいないですよね。だからこそ、いま日本人は迷っているんです。

佐々木 日本は、企業コミュニティが強くなりすぎた。農村共同体が終戦後に崩壊していく中で、その代替として昭和20年代から30年代にかけて、企業共同体に変わっていったんですね。日本の福祉制度が貧困なのは、全部会社に任せたからですよ。でも、結局、会社が崩壊して、コミュニティの機能がなくなりつつある状況の中、今度は家族に会社の代替を求めている。

――それでいうと、新しい共同体のかたちとして、シェアハウスを選ぶ人が増えていますよね。

佐々木 僕の知り合いに30代の独身女性がいて、新宿で11人のシェアハウスに住んでいるんですが、「結婚する必要があるのか、悩む」って言ってます。結婚する理由は3つあって、「寂しい」「老後不安」「子ども」だとすると、シェアハウスに住んでいると寂しくはないし、老後不安もない、なんとなくこのまま一緒に暮らしていれば、皆と一緒に年を取っていく。それで、彼女は一緒にシェアハウスに住んでくれることを前提に彼氏を募集して、いま付き合っています。でも、シェアハウスで子どもを育てるのは難しい。プライバシーの確保は難しいですよ。

白河 確かにシェアハウスは、これからの暮らしの有力な選択肢ですよね。私は、中高年をターゲットにした大人向けのシェアハウスができると予測していました。身軽な独身だと、今まで一人暮らしが主流でしたが、「寂しいけど、まだ介護は必要じゃないよね」っていう人も多いと思うんです。


そして、暮らしは共同体になる。