深澤真紀の「うまないうーまん」第6回

同性カップルや機能不全家族を想定していない、自民党の「第24条」改正草案の狭窄

2013/11/20 20:00
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イラスト:小野ほりでい

 「婚外子相続」について自民党内で大混乱が起こった。

 この問題は、「法律上で結婚していない男女間に生まれた子(婚外子)」への遺産相続の配分を、「法律上の夫婦の子(嫡出子)」の半分としている現行民法を、「婚外子も嫡出子も等しい配分で遺産相続できる」と改正することに対して、自民党内の保守派議員が「家族が崩壊する!」などと、大反発をしたのだ。

 事の発端は、今年9月に最高裁が「婚外子は嫡出子よりも遺産相続分が半分である」としている規定を「違憲」としたことである。ところがこの最高裁決定に対し、自民党の保守派である高市早苗政調会長などは、「ものすごく悔しい」と発言し、それ以外にも「従う必要がない」などと発言する保守派議員らが続出したのだ。

 ものすごく初歩的な話だが、日本は「国民主権」で、「三権分立」である。「国民主権」の「憲法」のもと、「裁判所」と「国会」と「内閣」は同権であり、最高裁が司法的に「違憲」と判断したのだから、立法府の国会はそれに合わせて、法律を改正するべきなのである。国会の下に最高裁があるわけではない。つまり「従う必要がない」などいう権利は、たとえ与党であってもないのだ。

 もともと「婚外子の相続差別」は、長く問題になってきた。この差別を「正妻とその子供の権利を守るために仕方ない」と思うだろうか? しかしそもそも婚外子は「結婚している男が不倫した相手の女に生ませた子供」ばかりではないのだ。日本ではいまだ認められない「夫婦別姓」のために法律婚を選ばないカップルもいるし、夫婦関係がとっくに破綻していても相手(夫であっても妻であっても)が絶対に離婚してくれないために、事実婚状態で子供を産むカップルもいる。そしてたとえ不倫した親から生まれても、その子供自体は差別されるべきではない。不倫した親の方には「慰謝料を払う」などのペナルティがきちんとあるので、不倫された側はその権利を行使すればいいのである。


 与党内であっても、保守派以外の議員や公明党議員から「最高裁の決定によって是正すべき」という声が上がり、自民党保守派は代わりに「家族の絆を守るための諸施策」を制定することで、しぶしぶ民法改正に同意したのだ。しかし、「家族の絆」って、お国に決めてもらうものだろうか?

 実はいま問題になっている「憲法改正」についても、「戦争放棄」を掲げる「第9条」だけが俎上に上がっているわけではない。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と「第24条」に追加することが草案に含まれているのだ。現行の「第24条」では、「家庭生活における個人の尊厳と両性の本質的平等」をうたっている。「個人の尊厳」と「両性の平等」は現代社会においては基本的な権利だろう。なぜわざわざ「家族の助け合い」を入れるのか。家族に虐待される子供もいる、同性カップルだっている。助け合うことができない家族や、法律的に認められない家族に対して、まったく想像力が働いていない。

「家族」という名の孤独 (講談社プラスアルファ文庫)