サイゾーウーマンコラム出産は本当に女の一大事!? コラム 深澤真紀の「うまないうーまん」第1回 出産を神格化・扇動する声に思う、“産むか産まないか”は本当に女の一大事!? 2013/09/05 21:00 深澤真紀の「うまないうーまん」 イラスト:小野ほりでい フィギュアスケートの安藤美姫選手が出産を発表し、父親については明らかにしなかったことで、マスコミは父親探しに奔走した。さらに「週刊文春」(文藝春秋)が公式ホームページで「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」というアンケートを行ったことで「シングルマザーを否定するのか」などとネットが炎上し、謝罪に追い込まれた。 そんななか、音楽家のMegumi Okumotoさん(@natarajashiva)のこのツイートが話題になった。 若く産んだら“若すぎる” 遅く産んだら“遅すぎる” 一人産んだら“一人だけ?” 沢山産んだら“やってける?” 一人で産んだら“父親は?” 産まなかったら“かわいそう” とかくこの世は棲みにくい。 まったくその通りで、安藤美姫を巡る問題は、女が「正しい出産」をしないことに対する世間からの「大きなお世話」どころか、「制裁」を実感させる出来事だったと言っていい。 さらに、「子供の性別」やら「働きながら育てるか、専業主婦で育てるか」など、出産を巡っては女性にとって「満点」はないのだ。 私は46歳、学生時代から25年付き合っている夫と結婚はしているが、大人2人と猫2匹という生活を送っている。お互いに子供を望まなかったこともあり、私自身も後悔はしていないのだが、それでも面倒くさいなと思うことはままある。 例えば、オネエタレントがこんなことを言うわけだ。 「ワタシは、女性は出産するというだけで男よりすばらしい存在だと思う。もし子供を産まなかったとしても、それについて深く悩んだわけだから、やっぱり男よりも大変なのよ」 一見、女性をほめているようだが、この言葉の裏には「子供を産まなかった女は、みんな深く悩むべきだ」というプレッシャーが隠されている。しかし私に関していえば、自分の人生で一番悩んだのは、育った家族との関係と、仕事における人間関係だったので、子供を産むか産まないかについては、悩む暇もなかった。それについて悩まなかった私は、男以下の存在というわけだろう(まあそれでもかまわないんだけど)。 あるいは、女性作家もこんなことを言う。 「若い女性に言いたいことは、この男でいいのかと悩まずに、種をもらって子供を産んだ方がいいということ」 これも、無頼でかっこいい発言のようだが、ただ乱暴なだけである。先の安倍政権時に柳沢伯夫厚労大臣(当時)が発言した「女は産む機械」と、あまり変わらないようにさえ聞こえる。さらにこの発言には「男なんてどうせ無責任で、子育てに興味がないから、自分で勝手に産んで育てた方がいい」という意味もあるわけだが、それは男に対しても失礼だと思うのだ。もちろんそういう無責任な男だっているが、一方ではそうではない男だってもちろんたくさんいるわけだし。自分が無責任な男とばかり付き合ってきただけだろ、と言いたくもなる。 オネエタレントは「自分が子供を産めない」からこそ、無責任に女性を神格化し、女性作家は「自分が子供を産んでよかった」からこそ、無責任に女性をあおる。 まったく違う立場からに見える発言なのに、なぜこんなにも「女性」を追いつめるのだろう。 女性にとって「産むか産まないか」は「人生の一大事」だと思われているからこそ、こういう発言が生まれるわけだが、産まなかった私にとってはただ面倒くさいだけである。 この「うまないうーまん」という連載タイトルもふざけていると思うかもしれないが、「産むか産まないか」なんて、それくらいの軽さでもいいのではないかと思うのだ。 安藤美姫はソチ五輪を目指すそうだが、彼女にこそ「ママでも金」を実現して欲しいと私は思っている。 深澤真紀(ふかさわ・まき) 1967年、東京生まれ。コラムニスト・編集者。2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の金曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく:“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)など。 最終更新:2019/05/17 20:11 Amazon 『ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法』 出産を巡る呪いが、この世で一番根深いのさっ 関連記事 出産によって蓋が開いた……小島慶子が語る子育てにおける母親の影響「自分の強さを守ること」瀧波ユカリ氏にママ同士の“内政干渉”への防護策を聞く「子育てを楽しむ方で伝えたい」、宇仁田ゆみが『うさぎドロップ』に込めた思い「子どものための料理」ではない、己のエゴのための「快楽追求型メニュー」とは俺は"だめんず"じゃない"モテ男"だ! 600人斬りでも純愛はできる!? 次の記事 相葉、風間俊介とボーリングで赤面? >