手錠で出産、虐待や凍死も! 刑務所新築の一方、変わらない実情に元女囚がひとこと
覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける瑠壬(るみ)さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
目次
・瑠壬の母校「岩国刑務所」が『報道特集』に登場
・刑務所腕での虐待はなくならず凍死者も……
・ムショでの出産時に「手錠ナシ」が守られず
瑠壬の母校「岩国刑務所」が『報道特集』に登場
TBSのテレビ番組『報道特集』の「女子刑務所特集」がインターネットでも見れます。なんと瑠壬の母校の岩国刑務所です。
懲役(=受刑者)のほか所長さん、刑務官、お医者さんの話もあります。取材中に94歳のおばあさんがいったん出所して、また2カ月後に戻ってきたそうです。番組では、お医者さんが、ムショの規則正しい生活が認知症の進行を遅くするとかコメントしてました。なるほどです。100歳までがんばれますね。
クスリ(=違法薬物)でパクられた(逮捕された)20代の女の子もいてましたが、やっぱり高齢化が進んでるんですね。強盗殺人の無期懲役囚もいてますが、出所してすぐ戻ってくる万引きの常習者が目立ちます。
前から書いてますが、生きることに興味ない人はムショもアリです。常に命令されて、お風呂は真夏でも一日おきで、出されたものしか食べられなくて、買い物もおしゃれもデートもできなくてもよければ、ですよ。
無期懲役の判決を受けて裁判所で万歳三唱した殺人犯は、ムショで自傷行為を繰り返してるそうですが、「寂しがり屋さん」に懲役は務まらないです。
刑務所腕での虐待はなくならず凍死者も……
番組では、万引の常習犯のおばあさんたちが「ムショは至れり尽くせり」と話してましたが、刑務官が懲役を虐待したとか、今も聞きますよね。
しつこいですが、「住めば都」はシャバの話で、ムショでは何もええことないです。そもそも早寝早起き、お酒もタバコも禁止ですが、健康に過ごせるとは限りません。慢性的なお医者さん不足ですから、持病がある人はアウトです。
そして、去年の10月には長野刑務所で凍死者が出ましたね。もともと長野刑務所は、めっちゃ寒いので有名ですが、死なせるほどって、どんだけなんでしょうか。経緯は調査中だそうです。
ちなみに亡くなった方は、懲役でなく罰金を払う代わりにムショで働く「労役場留置」でした。編集者さんは「労役」を知らなかったそうですが、普通は知らないですよね。「労役」は室内作業が中心で、工場に出ることはなく、懲役とは顔を合わせないようにしてるそうです。デパートの手提げ袋に取っ手をつけるようなラクな作業を黙々とやる感じです。
1日8時間の作業でだいたい5000円相当で、罰金が20万円なら40日もムショで働くことになります。8時間で5000円は最低賃金法的には微妙ですが、衣食住込みのお値段ですよ。
労役の場合、タテマエでは服や布団は自弁(=自腹)やそうですが、多分それはないですね。ダウンジャケットや布団の中に「禁制品」(クスリや酒類、ノコギリなどの脱走用具)を隠してるかどうか、いちいち検査が邪魔くさいからと思います。
ムショでの出産時に「手錠ナシ」が守られず
あと、前にちらっと書いた「ムショで出産する時は手錠をはめたまま」の件は、まだ解決してませんでした。
なんと2014年から22年の間に6件もあったそうです。14年に法務省が「出産時は手錠ナシで」と通達してるのに、ムショが守ってないんですね。
ムショは明治時代から続いてるところがほとんどで、施設の規模や設備がバラバラやから、中央の法務省よりも「現場の施設長の判断でOK」なんです。
06年の監獄法大改正の時には、あちこちのムショで「ウチ(=当施設)は改正法は関係ないから」と言われてたと聞いてます。それまで漢字とカタカナだった条文を漢字とひらがなにするところから変えてますが、そもそも現場が明治やから、どうもならんのかもしれません。
毎度同じオチで申し訳ないですが、ほんまにムショは行くところやないですよ。でも、ムショもよくなってきてる面はあります。新築が進んで、岩国刑務所も含めて各房にカギがなく、ほぼ個室のところも目立ちます。
刑務作業品も楽しいのが増えてますね。徳島刑務所の藍染め製品とかは、ふるさと納税の返礼品になってますし、松江刑務所のコーヒー焙煎機は3カ月待ち、横須賀刑務所の洗剤や横浜刑務所のうどんも人気です。
出所して同じものを作ることはないと思いますが、買ってくれた人が喜んでるのがわかったら、やる気につながっていきますよね。シャバは人手不足ですから、やる気があればなんとかなりますよ。
おかげさまで、瑠壬もなんとかやれてます。