“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、「最低でもGMARCH」はウソだった――わが子を新設校に入れた母の後悔

2024/01/27 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

落ち葉の上に立つ女性の画像
写真ACより

 近年、中学受験率が右肩上がりになっている。首都圏では特に受験生が増えており、すでにスタートしている 2024年の入試も激戦のようだ。

 そんな中、特に最近では、新設された学校や新たに共学化した学校に人気が集まっていて、学校説明会はどこも大盛況。その理由は、「時代に合った教育をしてくれそう」という保護者の期待感の現れだといわれている。

 というのも新しい学校では、英語教育を含めた国際教育、アクティブラーニング、海外留学、海外大学進学なども視野に入れたグローバリゼーションを意識したカリキュラムが採用され、さらに、医薬・サイエンスなど理数教育に力を入れているケースが多い。これらの点が保護者に評価されているのだ。

 一例を出すならば、24年4月に開校する開智所沢(中等)。学校がまだ出来上がっていないにもかかわらず、学校説明会は常に満員御礼。説明会では「新しい学校を、一緒に創りませんか?」というキャッチコピーを掲げて、保護者の心をわしづかみにしているという。

 このように、新設校の魅力は当然のことながら、すべてがフレッシュであること。生徒と教師が一体となって自分たちで学校を作り上げていこうという意欲に満ちあふれている点だろう。

「最低でも早慶GMARCH、東大も視野」中学受験で新設校を志望したワケ

 早恵美さん(仮名)も、長男である現在アラサーの由宇さん(仮名)を当時、開校してまだ間もない中高一貫校に入れた一人だ。

「由宇が小学5年生の時です。担任の先生がメンタルの疾患を患い、突然、長期休養に入られたんですね。当時はクラスが荒れていて学級崩壊のようになっていました。見かねた役員さんの主導で保護者会も頻繁に開かれたんですが、学校側の危機意識は低くて、解決策も示されず、私は学校不信になっていきました」

 そんな時、友人であるM君ママにランチついでに学校見学に誘われた早恵美さん。私立中高一貫校のイメージも湧かぬまま、M君ママについていったという。

「ずっと地方で育ってきた私にとっては、私立中学と言われてもピンとくるものではありませんでした。田舎では私立は公立の滑り止めだったので、なんで皆が『私立私立』というのかすらわからなかったんです」

 そんな早恵美さんが初めて訪れたのは、M君の志望校の一つであるZ中学だった。

「本当に驚きました。きれいな建物、豪華な設備といった外観はもちろん、練りに練った感のあるシラバス、そして目を見張るような大学合格実績……。都会の私立ってこういうところなんだ! と、目から鱗が落ちるような経験でしたね」

 Z中学は当時、改革著しい中高一貫校だったそうだが、卒業生の大学合格実績の好調さを受け、受験生に大人気。当時は偏差値も上がる一方の学校だったという。

 Z中学を一目で気に入った早恵美さん。すぐに中学受験塾に由宇さんを入れて、同校を志望校にしようとしたらしい。

「無知ゆえの怖いもの知らずで……。入塾したらZ中学に入れるくらいに思っていたんですが、塾の先生に『5年生の初夏からでは、とてもじゃないけどZ中学は無理ですよ』って言われちゃったんです。それで、M君ママに相談したところ、『今からでもいいから、たくさんの学校を見るといいよ』ってアドバイスを受けて、行ける範囲の学校を片っ端から見て回りました」

 その結果、早恵美さんは当時、ニューウェーブ校の一つと言われていたJ学園が気に入り、結果として同校に由宇さんを進学させたという。

「J学園は当時、開校から数年のまだ新しい学校で、卒業生が出ていないので、偏差値こそ低いままだったのですが、先生方が、『将来的には、最低でも早慶GMARCH、東大も視野に入れています!』と豪語なさっていましたし、授業もアクティブラーニングを多く取り入れていて、最先端の教育のように思えたんです。私にはすごく魅力的に映り、狙えない学校ではなかったので、由宇と一緒に頑張りました。無事に入学できた時は、本当にうれしかったですね」

去年の芝国際の炎上はすごかったわね……
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