コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

3時間遅刻のフワちゃんに「ありがとう」――絶対に怒らないアンミカに思うこと

2023/10/26 21:00
仁科友里(ライター)

 しかし、この考え方は果たしてポジティブなのだろうか。上述した通り、アンミカは神様のところに「怒って行くのもなんだし」と思い、自分をクールダウンさせたことを明かしている。特に伊勢神宮というスピリチュアルの聖地に行くのだから、落ちついた気分で行きたいという気持ちなのだろうが、別の見方をすると、アンミカは怒りをネガティブなものと決めつけ、ネガティブを避けようと躍起になっているのではないか。

 人はいろいろな感情や思考を持つ。極端な例でいうと、誰かに腹が立って「殺してやりたい」と思ったり、周囲にその気持ちを漏らすことは、人生に一度くらいはあるのではないか。この感情をポジティブかネガティブかで分けるのなら、間違いなくネガティブな感情だが、とはいえ、実際に殺す人はほぼいない。

 ではなぜ、人が誰にも言えないような悪い感情をあらわにすることがあるのかといえば、そうすることで、ストレスを発散し、 気持ちを切り替えられるからだろう。

 だが、アンミカの場合、悪い感情を持つこと自体を禁止しているように見えて、何とも不自然に感じられるのだ。もしそうなら、ネガティブなことを思うことすらいけないというアンミカのスタンスは、実はネガティブといえるのではないだろうか。ネガティブなことを思っていると悪いことが起こる……そんな恐れに囚われているように見えるのだ。

 スピリチュアルが好き、そして、ポジティブなようで実は神経質なまでにネガティブ要素を排除するというと、不倫が露見する前のベッキーが思い浮かぶ。

 平成中期、ポジティブで売っていたベッキーは、当時「ポジティブルール」なるものを掲げていたが、その中の一つに、「黒はお葬式の色だから、仕事では着ない」というものがあった。

 確かに葬儀の際は黒の喪服を着るから、黒い服を見ると、不祝儀を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、リトルブラックドレスという洋服が示す通り、黒はフォーマルな場所やパーティーでも着る、おしゃれな色でもある。ネガティブを恐れすぎると、ネガティブな側面にばかり目がいき、バランス感覚が損なわれてしまうのかもしれない。

 今の芸能人にとって、キャラはとても大事なもの。ポジティブキャラというのは、いつの時代にも需要があるから、アンミカの売り出し方は正解といえるのだろう。しかし、本当は怖がりなのに、それを振り払ってポジティブを演じているのだとしたら、カメラの回っていないところでは休養をたっぷり取って、疲れを癒やしてほしいものだ。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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X:@_nishinayuri

最終更新:2023/10/26 21:00
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