“噂の女”神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第670回】

ジャニーズ忠誠心がぶっちぎりの「女性セブン」、嵐・松本潤を大絶賛の背景

2023/10/17 21:00
神林広恵(ライター)
「女性セブン」10月26日号の写真
「女性セブン」10月26日号(小学館)(C)サイゾーウーマン

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 10日17日、ジャニーズ事務所の名称変更が行われ“ジャニーズ”が消滅した。芸能、マスコミ界に大きな影響を持った人間による類を見ない卑劣な性加害が巨大芸能事務所を消滅させ、日本社会に激震を与え続けている。今後、これを長年放置してきたマスコミ、日本社会はどう変化するのかしないのか。ジャニーズ性加害問題は芸能界の問題だけではない。マスコミへの圧力や忖度といった言論の問題であり、日本社会の性加害に対する鈍感さという複合的な病理でもある。これで終わりではない。終わりにしてはいけない。

第670回(10/12〜10/17発売号より)
1位「さよなら、ジャニーズ迫真大特集 『嵐は永遠に!』松潤のメンバー緊急招集」(「女性セブン」10月26日号)
2位「元ジャニーズJr.実名告白『罪悪感と二次被害で今も苦しい…』」(「週刊女性」10月31日号)
3位「有吉弘行 紅白司会を射止めた『総資産20億円の信望』」(「女性自身」10月31日号)

 ということでもちろん今週もジャニーズ問題だ。今後、このジャニーズという言葉をどう使うか検討する必要があるが、今週はこのまま使う。そしてトップはまたしてもジャニーズへの忠誠心、御用ぶり、忖度ぶりがぶっちぎりの「女性セブン」だ。

 先週、木村拓哉を持ち上げに持ち上げた「セブン」。その文面からは“独立なんかするなよ”“裏切るなよ”という恫喝さえ感じるものだったが、今回持ち上げまくっているのが嵐・松本潤だ。10月7日、嵐のメンバー5人が事務所に集結して今後について話し合ったこと、その会談は2時間半にも及んだことを紹介した後、怒涛の松潤賛美が開始される。特に松潤の嵐愛、そして性加害者であるジャニー喜多川氏との絆を強調しながら、だ。


「アイドルの資質は96年の入所当初からずば抜けていた」
「ジャニーさんが入所希望の子に直で声をかける(直電した)のは異例」
「(ジャニーさんは)松本さんの素質に惚れ込んだ」
「(ジャニーズの中でも)スーパーエリート」
「アイドルや俳優としてのセンスだけでなく、同時に素質を見せたのがプロデューサーとしての道」
「(テレビ番組で)《エンタメのぼくを作ったのはジャニーさんだと思っています》(と発言)」
「性加害問題の渦中には彼を新社長に推す声も」
「松本さんにとって嵐は特別」
「嵐をなくす、事務所を出るという選択肢はゼロに近い」

嵐・松潤の絶賛記事だけでない「女性セブン」

 先週に続き、独立に釘をさすような論調だが、今回それだけではないだろう。なにしろ「セブン」と同日発売の「週刊文春」(文藝春秋)には松潤に関するかなりセンセーショナルな記事が掲載されていたからだ。それが「助監督に『殺すぞ』大河脚本を改悪 嵐松本潤を告発する」という記事だ。

 タイトルからもわかるように、記事には松潤の傍若無人な横暴ぶり、スタッフへのひどい叱責や恫喝、過度な自分大好きぶりや、脚本を自分の都合よく書き換える様が克明に告発されている6頁にもわたる大特集。もちろん松潤サイドも、「週刊文春」からの取材などで事前に記事の存在をキャッチしていたはずだ。それでもって「セブン」の松潤絶賛記事――。

 これまでの「セブン」とジャニーズ、そして過去の連携ぶりを見ると、なるほどね、と思わざるを得ない。「セブン」同号にはやはり「週刊文春」が報じたキムタク独立報道を「木村拓哉 怒った!『それでも俺、逃げないから』」というタイトルの記事でわざわざ強く否定しているしね。ついでに「SnowMan目黒蓮『解散も脱退も移籍もない』9人の誓い」なんて記事も。

 今回もさすがでした。「セブン」さん!


元Jr.の実名告発を掲載した「週刊女性」への疑問

 今週の「週刊女性」を見て混乱した。うん? どういうこと? 

 これまでジャニーズの性加害問題に関し、アンケート企画記事というウルトラQで乗り切ってきた「週刊女性」。一般人に対するアンケート結果で性加害問題を報じるとは、週刊誌として情けない、そしてやる気がないと思ってたが今週は違った。ジャニー喜多川氏から性被害を受けた元Jr.が実名で告発を行っているのだ。ついに「週女」も目覚めたか。巨大芸能事務所との決裂を決意したのか! 

 今回「週女」でジャニー氏を告発しているのは、2006年にオーデションを受けジャニーズJr.として5年間ほど活動し、NHK BSプレミアムの『ザ少年倶楽部』にも出演していた田中斗希氏だ。田中氏はジャニー氏の自宅で性被害に遭ったこと、それは30回以上にわたったことなどを告発。それだけでなくジャニー氏からの性加害がその後の田中に与えた影響も、赤裸々に語っている。

「自分のセクシャリティーがもうグチャグチャで……。女の子が大好きでめちゃくちゃ遊んでいましたけど、男もイケる。自棄になって、カラダを売ってお金を稼ぐこともありました」

 そして田中氏は14年、東京・新宿二丁目のバーで働いていることが報道され(それを報じたのは「週女」だったのだが)、副業禁止のジャニーズ事務所を追われた。性被害がその後の人生にも大きく影を落とし、どれだけ深刻な影響を与えるのかがわかる告発だ。

 今回の騒動や多くの報道で、二次被害に遭ったことを訴える田中氏。だが疑問が。ジャニーズを事実上のクビになった田中氏だが、その後の20年に週刊誌記者になったと報じられた。その週刊誌とは「週刊女性」――。しかし記事にはそうした説明、記載はない。なぜ?

有吉弘行の年収・総資産記事にホッとするワケ

 会見前とは打って変わり、ジャニーズ特集盛りだくさんの女性週刊誌だが、そんな中で定番記事にホッとする。『NHK紅白歌合戦』の司会にも抜てきされた有吉弘行の年収が5億円で、総資産は20億円をくだらないらしい。すごすぎて想像も嫉妬もできないほどだが、こんな記事にホッとするとは。ジャニーズの性加害問題、恐るべし。



神林広恵(ライター)

神林広恵(ライター)

伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」(噂の真相)の元デスク。著書に『噂の女』(幻冬舎)、共著に"『日本を脅かす! 原発の深い闇』『木嶋佳苗 法廷証言』(共に宝島SUGOI文庫)などがある。

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最終更新:2023/10/24 14:33
年収5億円あったら何に使う?