“噂の女”神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第669回】

木村拓哉とジャニー喜多川氏の絆を伝える「女性セブン」が怖いワケ……ほめ殺しと美談の強烈さ

2023/10/03 21:30
神林広恵(ライター)
「女性セブン」10月12・19日号の写真
「女性セブン」10月12・19日号(小学館)(C)サイゾーウーマン

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 10月2日、再び行われたジャニーズ事務所の会見。事務所廃業やジャニー喜多川氏への決別宣言が大きな話題になっているが、それ以上に驚いたのが“会見でルールを守らない”として記者へのバッシングが起こっていること。それもマスコミ関係者からも非難の声が上がっていることだ。

 そもそも記者会見は闊達な質問、そして相手の矛盾を突きながら事実をあぶり出していくもの。だが、それを恐れる側、たとえば日本の政界などは都合の悪いことを隠蔽するため記者からの質問を制限するなど、“勝手なルール”を強要する言論弾圧が続いてきた。そうした悪弊をジャニーズ事務所も踏襲した。にもかかわらず、質問制限を批判するどころか、真実を追求しようと質問する記者を非難するとは。今回のジャニーズ問題は性加害に対する軽視、芸能事務所とマスコミの癒着、そしてジャーナリズムに対する無知まで、さまざまな日本の問題をあぶり出しつつある。

第669回(9/28〜10/3発売号より)
1位「木村拓哉 『汚れ役は俺がやる』不屈の極秘外交撮」(「女性セブン」10月12・19日号)
2位「盟友『井ノ原とジュニアを救う』辞めジャニ中居正広が『再建の主役』」
「目黒蓮覚醒!『僕は強くなる』新リーダー宣言」
「平野紫耀 『山Pとクロサギ共演』TBSで極秘進行中」
「木村拓哉 『失敗できない…』焦燥の脚本鬼ダメ出し!」
(「女性自身」10月17・24日合併号)
3位「紅白歌合戦 ジャニーズ出場は是か非か」(「週刊女性」10月17・24日合併号)

 9月7日の第1回ジャニーズ事務所の記者会見以来、女性週刊誌上で“解禁”になったジャニーズ性加害問題だが、ここにきて3誌それぞれのスタンスが徐々に定まりつつある。それは“ジャニーズとの距離感”という意味でも、だ。


 まず当初からぶっちぎりでジャニーズへの忠誠心、御用ぶり、忖度ぶりを発揮し続けてきたのが「女性セブン」だ。性被害を訴えた被害者のスキャンダルを掲載しバッシングし、性加害告発を疑問視するという卑劣な記事を掲載しジャニーズ事務所を援護。

 一方、所属タレントに対しては“苦境の中での絆”ストーリーで美談に仕立てる。そして性加害について事務所本体ではなく、事務所を去った滝沢秀明氏やSMAP元マネの“新しい地図”I社長に、その矛先を向ける始末。

木村拓哉をヨイショしまくる「女性セブン」

 今回は、あるジャニーズ大物を持ち上げに持ち上げた。それが木村拓哉だ。「セブン」記事には、性加害問題が拡大するなか木村が精力的に動き、さまざまな策を講じてきたことが数多く紹介される。

“東山紀之やジュリー前社長ら事務所幹部と会食し、タレントやスタッフへの熱い思いをぶちまけた”
“メッセージアプリで木村を慕う後輩らとグループを作り、腹を割った話をしている”
“伊藤英明の舞台や因縁の相手であるDA PUMPのツアー、さらに山下達郎のライブなどにも精力的に顔を出すなど全方位外交”

 「セブン」によると、こうした行動は木村の“覚悟の表れ”と礼賛されるが、記事に書かれているのは礼賛だけではない。例えば予定されていた『教場』(フジテレビ系)スペシャルドラマの制作が急きょ延期になったのは、性加害問題が原因ではないとして、こんな“釈明”までするのだ。


「実際には、生徒役のメインキャスト級の若手俳優が体調不良を理由に降板したことが、そもそものきっかけだったといわれています」(テレビ局関係者のコメント)

 信じがたい“ストーリー”としかいいようがない(ちなみに「女性自身」では『教場』延期は木村自身の脚本へのこだわり、ダメ出しによると報じられている)。

 さらに強烈なのが、木村とジャニー喜多川氏の“絆”について。ジャニー氏との出会い、ジャニー氏から怒られながらもスターとなった過程を「木村にとってもジャニー氏は大きな存在だった」と美談仕立てに紹介するのだ。今の木村の立場でこんな書かれ方をされても決してうれしくないはずで、むしろマイナスだと思うが、しかし「セブン」は2人の“絆”をことさら強調する。

 そして最後にぶち上げたのが、一部で取り沙汰されている木村の独立説だ。「セブン」はもちろんこのウワサを一蹴、「事務所を立て直そうと」「自ら汚れ役を引き受け」「矢面に立つ覚悟を見せる」などと木村をヨイショしまくるのだ。

 最後まで読んで恐ろしくなった。「セブン」がこんなに木村をヨイショしたのは、ほめ殺しで“独立なんかするなよ!”と釘を刺すつもりだったのではないかと思ってしまったから。怖い。

迷走を続けている「女性自身」

 なりふり構わず、そして一貫してジャニーズ側に立つ「女性セブン」に対し、迷走を続けているのが「女性自身」だ。BBCでの性加害告発以降、長らくこれを無視してきたが、9月のジャニーズ会見で重い腰を上げた。が、しかしその内容はスカスカで、何を言いたいのか、さっぱりわからないものばかり。

 今週もそう。4本ものジャニーズ関連記事が掲載されているが、一貫性もなく、その混乱ぶりがわかる。まず1本目は、すでにジャニーズを退所している中居正広が事務所を救う、というもの。なんでも中居は窮地に立つ後輩のために、その育成、プロデュースをやりたいと話しているらしい。「自身」は以前も中居がJr.の相談に乗っているという記事を掲載するなど、なぜか中居推し。今回のタイトルも「中居が再建の主役」。ってホンマかいな(笑)。

 次はSnowMan・目黒蓮。事務所の窮地に対し、「自らが先頭に立って、活躍し続け、影響力を持つことが何より重要だと考えている」らしい。その根拠は目黒のブログやインタビュー記事。うーん。

 3本目は、事務所を退所した平野紫耀ネタ。同じく退所組みの山下智久とドラマ『クロサギ』(TBS系)の続編での共演話が水面下で進んでいるという記事。そして木村拓哉。前述したようにドラマ『教場』スペシャルの延期は、性加害問題でもなくスポンサー問題でもなく、“木村自身が脚本にダメ出しを出したため”という記事。“平時”ならまだしも、“緊急時”にあるジャニーズネタとしては、悲しすぎるショボネタの数々だ。

 おそらく今回の問題をどう報じたらいいかという本質的なことがわからず、混乱しているのだろう。ジャニーズが今後どうなるのか、そして自分たちがどう振る舞えばいいか、ジャニーズとの関係をどうするのかなど、今後のビジョンが持てない、わからない。

 だから本質(性加害)とは遠いサイドネタを掲載して、お茶を濁しているように見える。そう考えると、ジャニーズさまのため、手を替え品を替えて記事にさまざまな“加工”を施す「セブン」のほうが、テクニック的にも潔さ的にも高いのかも(笑)。

アンケート企画の乱打で乗り切ろうとする「週刊女性」

 そして性加害問題に関し、一貫してアンケート企画で乗り切ろうとしているのが「週刊女性」だ。ジャニーズ問題を初めて特集記事として掲載した10月3日号では、「総力取材!『ジャニーズ』の名が消える日」と題し、“全国の女性1000人にインターネットでのアンケート結果”記事が掲載された。加えて同号には「緊急アンケート 契約スポンサー85社が明かした『ジャニーズとの今後』」というアンケート記事も。

 さらに翌週の10月10日号では「ジャニー喜多川氏性加害問題で続々契約打ち切り ジャニーズ起用CM今後『買う? 買わない?』」と題されたアンケート企画が。今回もまた、紅白歌合戦にジャニーズが出場するのは是か非かのアンケート企画だ。しかもトップ特集。やる気が全然感じられない安易な「週女」アンケート特集企画の乱打だった。

神林広恵(ライター)

神林広恵(ライター)

伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」(噂の真相)の元デスク。著書に『噂の女』(幻冬舎)、共著に"『日本を脅かす! 原発の深い闇』『木嶋佳苗 法廷証言』(共に宝島SUGOI文庫)などがある。

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最終更新:2023/10/04 09:02
「週刊女性」のアンケートはいつまで続くのか