“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験塾に通うお金がない! それでも第一志望に合格した子が小4からやっていたこととは?

2023/03/26 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

中学受験塾に通うお金がない! それでも第一志望に合格した子が小4からやっていたこととは?
写真ACより

 今や中学受験は「珍しくないこと」といえるほどの大盛況ぶり で、今年度の中学受験者数は過去最高を記録。近年では、中学受験開始も低年齢化が進んでおり、一部の地域では小学1年生から中学受験専門塾に通っている子も多数存在する。

 中学受験塾に限らず、世の中は早期教育全盛の時代。英会話を筆頭に体操、水泳、ピアノ、プログラミング、公文などの習い事に複数通っている子も珍しくない。

 子どもの塾や習い事は、親の所得格差が如実に現れるものだが 、このような早期教育は皆無でも、難関大学の切符を手にしている子もまた多い。

 今回は、裕福とはいえない家庭環境にありながらも、中学受験をして「夢を叶えた子」の話をしてみたい。


 春香さん(仮名)は現在20歳。幼稚園の頃に父親を亡くし、母親である真理さん(仮名)との2人暮らしだ。

 父親は大病を患い、その治療費がかなりの額に及んだそうで、春香さんいわく「父が亡くなった時には、我が家の財布はスッカラカン」。真理さんは長く専業主婦であり、正社員の働き口がなく、早朝と日中のパート の掛け持ちで、必死に春香さんを育ててくれたという。

「私が住んでいるのは教育熱心なご家庭が多いエリアなので、放課後に遊んでいても、友達は『習い事があるから』って帰っちゃうんですよ。うちは経済的に塾や習い事なんてもってのほかだったので、1人残されてしまって……。 小4からは学童もなかったため、みんなが塾に行く一方、私は閉館まで市の図書館で本を読むってコースが多かったです」

 真理さんには「朝と夜の食事は家族で!」という方針があり、春香さんと必ず一緒に食卓を囲んでいたという。

「その時に、親子で『今日あった楽しいこと』を発表し合っていました。それこそ、近所の家の犬をなでたとか、そんな他愛もない話です。それから、最近読んで面白かった本を互いに教え合ったり……。2人とも図書館マニアなので、読書が趣味なんですよ。お金、要らないですし(笑)」


 春香さんは、幼い頃に母と囲んだ食卓の話をするうち、 思い出したようにこんな話を付け加えた。

「母のすごいところは、子どもの話を最初から最後まで、ちゃんと聞いてくれたところですね。母が『うんうん、それで?』と言ってくれるので、調子に乗ってしゃべっていました」