コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

中田敦彦がテレビを面白くすると思うワケ――「誇大妄想的な一面を隠し切れない」彼の魅力

2023/03/09 21:00
仁科友里(ライター)

 また、中田いわく、YouTubeチャンネルも先見の明があって始めたわけではなく、「絶望のふちでギリやった」ことだそうだ。それが今や登録者数500万人超えの人気チャンネルになっているわけだから、やはり中田は“持っている”と言えるのだろうが、中田が独特の“もろさ”を持っていることにも気づかされる。

 同番組司会のオードリー・若林正恭に「たまに劣等感を口にするじゃない?」と指摘されると、中田はそれを認め、「東大に入って当たり前の高校から、ドロップアウトして慶應に入ってる」と、大学受験の“失敗”による劣等感を持っていると告白。若林が「そんな世界があるの?」と驚くと、中田は「あるんですよ。東大以外は大学じゃないって俺、言ってましたから」と説明した。

 例えば、東大に合格した人が、その誇らしさから「東大以外は大学じゃない」と言うならわかるが、中田はまだ受かっていないのに、受かった人のような物言いをしてしまっている。これはまさに彼の特徴ではないだろうか。

 中田はMCの話が来なかったことで心が折れ、その焦りから会社と揉めてしまったと言っていたが、MCになれなかったのは、中田の実力が及ばなかったとは言い切れない。オファーがあって成立する仕事は、タイミングも重要な要素なので、もうちょっと待っていたら、声がかかっていた可能性は否定できない。

 けれど、「まだ手にしていないものを、手にした気分で物を言う」 メンタリティの人の場合、「これだけできるのに」「どうしてオレにMCの話が来ないのか」とキレやすくなり、周囲と修復不可能な揉め事を起こしてしまうのではないだろうか。

 一般人がそんなことをしていたら「ちょっと落ち着こうか」と声をかけたいところだが、中田の場合、これが最大の魅力だと思うのだ。

 研究熱心で何でも小器用にこなし、その結果、すぐに天狗になるが、自己評価と現実が折り合わず、がっくりきて劣等感を募らす――売れていても謙虚に振る舞う芸能人が多い中、誇大妄想的な部分を隠さない中田がテレビにいたら、面白い気もする。加えて、先に指摘した新しいタイプの人に見せかけて、実は古いタイプの人というギャップも、視聴者に面白く映るのではないか。

 人の話を聞くのが好きではないようだから、MCには向かないかもしれないけれど、時々テレビに出てほしいと思うのは、私だけではないはずだ。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2023/03/09 21:00
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