コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

瀬戸内寂聴先生に通ずる、YOUのニュー・サバサバスタイル

2023/03/02 21:18
仁科友里(ライター)

 YOUはさらっとこの難所を乗り越えた。同番組でYOUは「みんなそうだと思うけど、まずみんなに言いたい、聞いてほしくて、友達にワーっと言って、それで解決していることのほうが多い」と、相談というのは答えを求めて行うものではなく、ストレス発散が目的であると受け止めているそうだ。なので、人の相談に乗った後、報告がなくても特に気にならないという。

 そういえば、人生相談の名手としても知られていた作家・瀬戸内寂聴先生(21年死去)は、“悩み相談は話を聞いて、一緒に泣いてあげるだけでいい”といった意味合いのことを話していた。

 瀬戸内先生とYOUは、恋多きオンナという共通点を持つが、奇しくも2人が同じような見解を持っているのは、「男女の仲、ひいては人の心というものは、理屈ではどうにもならない部分がある」との実感から、「相手の悩みに他人がどうこう言ってもしょうがない」という諦念を持っているからではないだろうか。

 そもそも、相談に乗るという行為は、なかなかの鬼門であるように思う。真剣に答えたつもりでも、相手が納得しなかったり、「傷ついた」と言われてしまえば失敗である。それに今時、「ああしろ、こうしろ」というアドバイスは多様性の時代にそぐわない気がするし、「アドバイスを聞き入れない」とか「その後の報告がない」と文句を言うと、こちら側がパワハラ気質の人物であるように見られてしまう。

 こう考えてみると、相談には乗るけれど、その後の報告は求めず、仮に相手がアドバイスを聞き入れないとしても、「私も昔はそうだった」と言えるYOUは、人生相談の名手になる素質を備えたタレントといえるのではないだろうか。

 少し前まで、YOUのサバサバキャラのポイントは、「サバサバしているけれど、オトコが途切れない」ことだったと私は思っている。「サバサバしたオンナはオトコにモテなさそう」というイメージを覆す彼女の姿が、テレビ映えする個性になっていたと感じるのだ。しかし、今はもうモテるオンナが憧れられる時代ではない。現在のYOUのスタンスなら、そのキャラを上書きする、ニュー・サバサバキャラを確立できる気がするのだ。

 他人に対して押し付けがましさがなく、それ故に年齢も性別も問わず、支持される――よく考えると、ニューサバサバって無責任なのでは? という気がしないでもないが、それはさておき、売れ続けているタレントの「自分を変化させる能力」には感服するばかりだ。


仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2023/03/02 21:18
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