コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

『あちこちオードリー』小籔千豊は丸くなった? 時代に即した“説教芸”のあり方

2023/02/16 21:00
仁科友里(ライター)

 そんな小籔はこの話に続けて、人にはいろいろなタイプがいて、モチベーションも異なると説明し、具体例として「能力ないのにモチベーションが高いヤツ」「努力しないのに売れたくてしゃーないヤツ」「男前じゃないのにモテたくてしゃーないヤツ、一番タチ悪い」と毒舌を披露した。

 3つ目の「男前じゃないのにモテたくてしゃーないヤツ」は、劇団とは直接関係ない気もするし、男前じゃなくてもモテたいと思うのは悪いことではないが、誰かをかばった上での毒舌なら、キツすぎないため、世間から好意的に受け入れられるのではないか。また、「うまい」と思ったのは、吉本新喜劇には女性の劇団員もいるが、「美人じゃないのに」と切り出さなかったことだ。

 小籔といえばかつて、今では女性蔑視と批判されかねないような発言をよくしていた。例えば、「いい年こいた美魔女をチヤホヤする国に未来はない」。その理由の一つとして「白髪染めも我慢して、自分磨きのお金を子どもの塾代にしているおばはんもおるわけです。そのおばはんも賛美する逆側の意見もないと」と挙げていたのだ。

 なんとなく正論のような気もするが、美魔女が美を保つための費用をどうねん出するかは、人それぞれ。自分で稼いだお金をつぎ込む人もいれば、夫からもらったお小遣いを使う人もいるだろう。本人もしくは家族が同意しているなら、人のカネの使い方を他人がとやかく言う権利はない。

 おそらく、かつて小籔の中には「貧しいけれど、文句も言わずに耐え忍ぶ女性が美しい」という「女性=忍従」的な価値観があったのだろう。しかし、今の時代にこの発言をしたら、小籔のイメージは下がる。それを見越してか、小藪は女性についての主張をあまりしなくなったように思う。今回の毒舌でも、女性を例に持ってこないあたり、小籔は「わかっている」のだと感じた。

 見え方、見せ方を少し変えると、全体の印象までも変わってくる。他人からの評価に納得していない人は、自分から見て「昔より丸くなった芸能人」を参考にしてみるといいのかもしれない。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2023/02/16 21:00
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