私は元闇金おばさん

玄関に並べられた「夫婦の遺骨」――闇金社員が走って逃げ出した“恐怖の現場”

2023/01/07 16:00
るり子(ライター)

「小林の社長、女房と一緒に死んでいました」

 しばらくすると、珍しく慌てた様子の伊東部長が、息を荒らげながら電話をかけてきました。少し前に戻って来た社長に電話をつなぐと、スピーカーマイクで通話するため、その会話は必然的に社内で共有されます。

「小林の社長、女房と一緒に死んでいました」
「どうしてわかった? 死体があるのか?」
「2人分の骨壷が、玄関に安置されています。位牌の名前も確認したので、間違いないです」

 鍵屋を呼んで家に入ったところ、玄関ホールにお骨が並んで安置されていたそうで、その場から走って逃げ出したほどに驚かれたとのことでした。ケンカ自慢であろう小田さんも同様、こうした状況には弱いらしく、ここで寝るのは嫌だと駄々をこねているようです。

 家の中に入った2人が突如逃げ出したことで、それに釣られた鍵屋も全速力で走り出したと聞き、その情景が可笑しくてニヤついていると愛子さんが言いました。

「遺骨くらいで怖がって、部長たちも情けないわね」
「私の実家は葬儀屋なので、見慣れているから、なんとも思わないですけど」
「るりちゃんは、現場向きかもね。何事にも動じなさそうだから、きっと向いているわよ」
「それは絶対に無理ですよ。私、他人の家に泊まることできないので、占有できないし」


 結局、その社長の自宅は占有することになり、担当の佐藤さんと藤原さんが現場に入ることになりました。伊東部長と小田さんは、そのまま連帯保証人の自宅に向かい、取り立てを継続されます。

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