【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

エリザベス女王と昭和天皇にみる「マスコミの情報操作」ーー“開示的”すぎた宮内庁の失敗とは?

2022/12/03 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

天皇のご家族は、病気についてなにも知らなかったのか?

堀江 記録がある中、日本史において最初期に末期がん患者として余命宣告をされたのは、明治時代の大政治家・岩倉具視(いわくらともみ)なんですが、この時も外国人の主治医が、「あなたなら、死が近いと伝えられても衝撃に耐えられるだろうし、その時期を知っていたほうが職務上、いいと思った」

 と、岩倉に「あえて」余命を告げた記録があります。実際、岩倉は告知に感謝し、死の直前まで仕事を続けて、亡くなることができたわけですが……。

――現在でも、高齢者の方にはがんの余命宣告をすることの“功罪”については議論がありますよね。陛下やご家族の方々は、本当に何もご存じではなかったのでしょうか?

堀江 直接、その疑問に答える記事は見つかりませんでしたが、かなり興味深いコメントを、昭和天皇の甥にあたる三笠宮寛仁親王がなさっています(小学館「女性セブン」88年10月20日)。

 これは雑誌の発売時期から見て、同年9月19日深夜以降、何回か起きた昭和天皇の吐血事件の衝撃から1週間~10日前後あと……それこそ、朝日新聞などによる「膵臓がん」スッパ抜き報道を受けてのインタビュー記事だったと考えられます。


 寛仁親王は、本当に天皇陛下は「がん」なのか? と聞かれると「ぼくは医学の専門家ではないから、陛下ががんに蝕まれていらっしゃるかどうか、全然わかりませんよ」と、言いつつも、この記事の前年87年9月22日に「腸の通過障害を除去する手術を受けられた」ことについて触れ(講談社「FRIDAY」88年10月7日号)、この「手術がいちおう成功して」という言葉遣いになっているわけです。

――「いちおう成功」……微妙な言い方ですね。

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